分業制ゆえのコミュニケーション上のリスク
一方で、弊害も生じました。以前は同じ担当者が何度も遺族と接するなかで、自然と信頼関係が生まれていました。このことをザイアンス効果と言いますが、分業制では失われます。
次工程に引き継ぎを繰り返すことで、コミュニケーション上のリスクが生じます。例えば、担当者が打ち合わせの段階で、長男と次男がうまくいってなさそうな不穏な空気を感じ取った場合、1人担当制なら意識的に継続フォローができますが、各工程で担当者が替わるシステムでは、そうした家族間に漂う空気感の共有までは困難です。また打ち合わせの段階で言葉足らずの面があったとしても、それまでは担当者が伴走する間にフォローできていましたが、それができなくなったことで、クレームにつながりやすくなった側面は否めません。
お客様に見えない部分で生じた弊害はまだあります。以前は打ち合わせの見積額はパッとしないが、葬儀担当のアンケート評価が良いために、社内で評価されていたスタッフもいました。しかし打ち合わせの専属スタッフになってしまうと、打ち合わせ金額のみで評価されることになり、強引な販売を行うインセンティブが生じます。以上の構造的な問題で、トラブルが増えていると思われます。
ただし零細葬儀社は人が少ないので、分業制に移行することができません。大手葬儀社であれば分業制を導入することもできますが、零細葬儀社の場合、睡眠不足と疲労に悩まされながら、1人で担当を行うことになります。葬儀件数が増加する状況で、提供する品質はどんどん低下していきます。
以前より仕事はハードになっていますが、葬儀単価が上がらないため、給料も上げにくい状況です。増員したくても人が集まりません。たまに新人を採用できても、育成する余裕はありません。経験の浅いまま現場に出すので、これもトラブルの原因になっています。