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快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた
BYD「RACCO」の本当の脅威

日本の牙城「軽自動車規格」に真正面から挑むBYD・ラッコは、やはり「黒船」なのか? これまでの自動車開発のサイクルを大幅短縮しかねない“独自のバッテリー技術”が満載

バッテリーメーカーとしてのプライドが仕上げた軽BEVの専用設計

 では詳細に見ていきましょう。まずネーミングはBYDのラインナップに見られる海洋生物シリーズに沿ったものです。同時に「日常の移動をもっと“ラク”にしたい」という商品コンセプトにも繋がるネーミングとのこと。

 目の前に登場したボディは、室内空間を最大限に確保するためには必須である典型的な箱形のスーパーハイトワゴンのフォルムです。一方で、四隅の角などを適度に丸めることによって、全体の印象はソフト。

 次に実用性において重要な後席の乗降性ですが、左右とも電動スライドドアを採用し、実用性を最大限に考慮しています。日本の軽自動車ユーザーが求める「狭い場所でも乗り降りしやすい」、「荷物も載せやすい」などと言った実用性を確保したことも日本市場を徹底分析した結果でしょう。

 そしてバッテリーメーカーとしてスタートし、成長してきたBYDですから、バッテリーに関する技術的な注目点は多くあります。まずは独自開発した「ブレードバッテリー(リン酸鉄リチュームイオンバッテリー/以下、LFP)」が「ラッコ」にも採用されています。このバッテリーは刀(ブレード)のように長細く、薄い形状のバッテリーはコバルト、ニッケルなどのレアメタルといった高価な希少金属を使わないため、生産コストは安くなります。さらに熱暴走や発火のリスクも極めて低いと言う利点もあり、その寿命は日本や欧米のメーカーが使用している「ニッケル・マンガン・コバルトバッテリー(以下、NMC)」の倍以上と言われています。

 まさに良いことずくめのようなLFPですが、一方でNMCに比べて体積あたりのエネルギー密度が低いため、航続距離を稼ぐには大きく重くなり、さらに温度が低いと性能が落ちやすいなどといったデメリットがあります。それをBYDは「ブレードバッテリー」などの最先端技術で克服し、今回は「ラッコ」にも採用となったのです。

 ちなみにBYDの「ATTO 3」や「SEAL」、「DOLPHIN」にも「ブレードバッテリー」は採用されています。またアメリカのテスラ (Tesla)モデル3 やモデルY、そしてスズキ初の量産BEVとして登場した「eビターラ 」にはBYD製のLFPバッテリーが採用されています。今後は、コストバランスに優れ、日常使いで100%充電が推奨されるLFPバッテリーの採用が進むことになるでしょう。

やはり「ラッコ」は“黒船”と呼べるのか?

 そしてもう一点、このブレードバッテリーをボディ構造の一部として組み込んだ「CTB(Cell to Body)」という独自技術と、「ラッコ」専用に新開発された統合型EVユニット「X-PACK」が組み合わせて採用されています。これは駆動用バッテリー、電子制御ユニット、DC-DCコンバータや車載充電器(OBC)などの統合ユニットを、保護されたバッテリーパック内に効率よくまとめたシステム。これによって電力伝送のロスも減り、ライバルを凌ぐ航続距離と軽快で安定した走りも実現しています。同時に約70%の高強度鋼板を使用したり、ルーフやサイドパネルにはレーザー溶接を採用したことで、しっかりとしたボディ剛性を実現出来ています。

 さらにこの効率的なシステムを基本にすれば、サイズ感を少し変更するだけで色々な車の開発が容易に進むかもしれません。これまでの自動車開発のサイクルは短縮されると言う変革がもたらされる可能性も……。その意味からみれば「ラッコ」は“黒船”と呼べるのかもしれません。

 では、後編では気になる走行距離や、ラッコに実際に乗車してのレポートを続けていきます。

【写真】スーパーハイトワゴンならではの余裕ある居住空間
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