1968年の日本シリーズ巨人対阪急第2戦に登板した城之内邦雄氏。阪急打線を1点に抑え完投勝利した
離れていくならそれでいい
自分は平均寿命をとっくに超えてしまって、同級生ももう半分以上が亡くなっている。巨人の仲間でも、ピッチャーでオレより先輩で生きているのは伊藤芳明さん(92)、バッターは広岡達朗さん(94)、森祇晶さん(89)ぐらいだからね。オレもいつ何が起きるかわからない、という自覚はあります。
でも、だからといって「ひとりになったらどうするか」を夫婦で細かく話し合っているわけではなくて、ある程度は“自然のなりゆきに任せる”ことも大切にしています。過度に心配をしたり、妻にいろいろ指図をしたりしてもしょうがない。最終的には、残された者が考えればいいことなんだから。
自宅をどうするかについても、残された者が決めればいいと思っています。お互いに大病もしていないし、子供がいないから家の相続で揉める心配もない。だから“なんとかなるだろう”という気持ちが強いのかもしれないね。
人生、余白を持って、あまり細かく決めすぎないほうがいいこともあるんじゃないですか。人間関係も自然体で、相手から離れていくならそれでいい、というスタンスです。年賀状のやり取りは、オレから出さなくなることはないけれど、向こうから来なくなったら送らない。友人・知人との電話も、気づいたらほとんどなくなっているケースもある。自分から整理しようなんて思わなくても、そうやって勝手に整理されていくものですよ。
以前は夫婦ふたりでゴルフに行ったり、旅行をしたりしていました。グアムには友達がいて毎年1週間ぐらい滞在していたし、ハワイにもよく行った。だけど最近は遠出しないで、家でゆっくりしています。
やっぱり、最後は長年住んだ自宅がいちばん落ち着くね。テレビで時代劇チャンネルを見て、巨人戦をテレビ観戦する。オレが野球を見ながら文句ばかりを言っているから、女房は嫌がって一緒に見ないけど(笑)。しょっちゅう喧嘩しながらも、どうにか仲良くやっています。
食事も少し前までは一緒に外食に出かけたけど、今は近所の店からのデリバリーがほとんどだね。食欲に合わせて作ってくれる女房の手料理が一番だよ。でもそれがいいんだよ。この歳になったら、無理せず自宅でのんびりするのがいちばん。流れに身をゆだねて、夫婦で穏やかな晩年を過ごしています。
※週刊ポスト2026年9月25日・10月2日号
