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働く高齢者を狙い撃ちする「基礎年金」の減額

 問題はそれとセットで議論されてきた「基礎年金」の減額である。働く高齢者の在職支給停止で減額されるのは厚生年金の報酬比例部分だけで、どれだけ収入が多くても基礎年金は減額されない。

 そこで新たな年金減額の仕組みをつくり、年間所得550万円を超える働く高齢者には段階的に基礎年金もカットしようというのだ。民主党政権時代の年金機能強化法案に盛り込まれ、その後、検討課題としていったん削除されたが、安倍政権の経済財政諮問会議で復活提案されている。

 年金だけではない。安倍政権になって後期高齢者医療制度の窓口負担や医療費が一定額を超えた場合に患者の負担が軽減される「高額療養費制度」の限度額が引き上げられ、介護保険料もどんどん引き上げられている。

 政府が年内に閣議決定する新しい「高齢社会対策大綱」について、内閣府の有識者会議は大綱策定のための報告書を10月にまとめる。新しい「高齢社会対策大綱」には、高齢者が老後のために守ってきた退職金や貯金など虎の子の個人金融資産1000兆円を、若い世代の「起業資金」に使わせようという仕組み作りまで検討されている。どこまで高齢者のカネをあてにするのか。

 そして2019年10月にはいよいよ消費税率が10%に上がり、高齢者の懐を直撃する。消費税増税で一番負担が重いのは、物価が上がるのに収入が増えない年金生活者なのだ。年金や再雇用による給料などの収入は減額、支出は消費増税で大幅に増える。高齢者は国にとことん搾り取られていくばかりだ。

※週刊ポスト2017年9月29日号

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