中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「努力は報われる」という言葉の胡散臭さ

 貧乏な家の八男として生まれた山田太郎氏(もちろん仮名)は、食べるものにも苦労する幼少時代を送り、中学を卒業したらすぐに集団就職で東京へ。最初に勤めた板金店では、職人からのいじめにも遭うが、持ち前の根性で「技術を習得するまではやめないぞ」と決意し、歯を食いしばりながら働き続けた。

 5年間で工場No.1の技術を持つようになり、山田氏は20歳で独立。自動車の修理工場を立ち上げた。しかしながら23歳の時に隣の家が火事になり、工場ももらい火で全焼。そんな状況になりつつも山田氏は諦めることはなく、今度は自動車のセールスマンになる。技術のことも分かるセールスマンとして関東でNo.1の売り上げを誇った山田氏は、自ら自動車の販売会社を立ち上げる。開業当初は人材不足から自らが手と体を動かし続け、平均労働時間は1日20時間。しかし、その努力を3年間続けたところ、山田氏の会社は関東でNo.1の販売会社にのし上がり、その3年後の上場に繋がるのである。

 山田氏は「私のように才能のない者は努力してナンボです。努力は裏切りません。努力すれば報われるのです」と語り、記者に対して「あなたも努力して立派なモノカキになってください」と暖かい言葉をくれたのだった──。

 確かに山田太郎氏の根性はすごいとは思うのですが、これを「努力したから成功した」という美談めいたものに敢えてしなくてもいいのでは? 「民主党政権時代に株を仕込んでいたら、アベノミクス景気でドーンと上がっちゃって、3000万円分の株が8000万円になったんっす! もうオレ、働くのやめましたわぃ。デイトレーダーになります!」みたいな話は美談にはなり得ない。

 ここに「努力は報われる」という言葉の胡散臭さを感じるのでした。「いい思いをするには苦労と苦行がセットにならなくてはいけないのか?」なんてことを言いたくなるではありませんか。

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