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竹下内閣の3%の消費税導入時、当時は国民に内閣を倒す力あった

 政治家にとって国民から新しい税を取るのは大変な困難が伴う。消費税は導入まで10年かかり、3つの内閣が倒れた。最初は大平内閣が1979年に打ち出した税率5%の「一般消費税」、次に中曽根内閣が税率5%の売上税法案を提出したが、いずれも批判を浴びて断念した。

 竹下首相は税率を3%に引き下げたうえ、所得税、法人税、相続税の減税と抱き合わせて「増税ではありません」と消費税法を国会で成立させたが、この時も国民の反対デモが全国に広がり、消費税導入とともに内閣総辞職した。

 思えば、当時はまだ増税に反発して内閣を倒す力が国民にあった。だが、いったん税制ができれば、国民はやがて痛みを忘れ、怒りを失う。

「新税は全て悪税といわれるが、税制は慣れてしまえばそれまでのことともいわれる」

 竹下氏は退陣前に見事にそう予言していた。

 消費税の税率は当初の3%から、橋本内閣で5%、安倍内閣では8%、さらに10%に引き上げられ、消費税収もいまや年20兆円を超える。平成の30年間に国民が負担した消費税の総額はざっと400兆円、国民に「広く浅く」負担を求める税から、「広く深く」取られる税になった。

 それなのに、増税の目的だった肝心の国民の社会保障は細るばかりだ。年金の支給開始年齢は60歳から65歳へと引き上げられ、年金生活者への支給カットと現役世代には保険料アップが続いている。国の借金は消費税導入直前の206兆円(1989年3月末)から1103兆円(2019年3月末)へと膨れあがり、子孫に巨額のツケが残された。

※週刊ポスト2019年9月6日号

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