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「上級/下級」の分断社会 世帯間の所得格差が加速度的に拡大するワケ

 あなたは「上級」なのか「下級」なのか。隣人と比べて「上」なのか「下」なのか──そこから目を背けても何も始まらない。分断社会を受け入れるわけではないが、まずは冷静に、客観的に、さまざまな視点から、自分や家族が置かれた「序列」を見つめることが必要だ。そこから自ずと対処法も見えてくるはずである。

「普通の世帯の所得」は423万円

 もちろん自分や世帯の年収はわかっている。だけど、国民全体から見れば、自分は上から何%ぐらいのところにいるのだろう。または、下から数えた方が早いのか──そんな自分の“現在地”を知らない人は意外に多い。

4世帯に1世帯以上が年収300万円未満(世帯別所得階級別の割合・2017年)

4世帯に1世帯以上が年収300万円未満(世帯別所得階級別の割合・2017年)

 厚労省調査(別掲グラフ)によると、日本の世帯の平均所得は551.6万円だ。ただし、この「平均」という言葉に騙されてはいけない。一部の超高所得者が一気に平均を引き上げてしまうので、実態とかけ離れてしまうのだ。実際、この平均の551.6万円よりも多く収入を得ている世帯は、全体の約38%しかいない。

 日本の世帯全体を一列に並べると、所得が真ん中の世帯(これを中央値という)は423万円になる。統計上、この数字の方が「普通の世帯の所得」に近いといえる。つまり、おおよそ420万円ぐらいの所得なら、あなたの世帯はごく普通レベル。平均所得の550万円程度であれば、少しリッチな家庭といえる。それより多いか、少ないか、いかがだろうか。

『アンダークラス』(ちくま新書)の著者で早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二さんが説明する。

「ざっくり言うと、貧困線は中央値の半分といわれるので、423万円の半分(212万円)未満なら貧困層であり、『下級』といっていいでしょう。逆に、富裕層は中央値の2倍で、846万円以上は『上級』といえます」

 別掲グラフを見ると、4世帯に1世帯以上(27.4%)が「年間100万~300万円未満」の世帯所得で、全体の中で最も多いグループだ。そのグループの大半が、一般には「貧困層」と呼ばれることになる。実は、この20年余り、日本人の収入は減り続けている。

「振り返れば1997年が日本人の所得のピークでした。1997年の平均所得661.2万円に対し、2017年の平均所得は551.6万円。バブル崩壊やリーマン・ショック、非正規雇用の増加などで、所得水準は2割も落ちこみました。

 今では、派遣やパートやアルバイトなど186万円以下の年収で食いつなぐ新最下層『アンダークラス』まで登場し、その数は約930万人、日本の労働人口の約15%を占めるほど急速に拡大しています」(橋本さん)

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