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貯蓄ゼロ世帯の約8割が「持ち家」で暮らすという日本の現実

持ち家の人は6割以上(持ち家と借家の割合・2013年)

持ち家の人は6割以上(持ち家と借家の割合・2013年)

 日本社会の有り様を映し出す「上級国民/下級国民」という言葉。かつての「上流/下流」という格差社会は、今では「上級/下級」という分断社会へと移行しているのが現実のようだ。「一億総中流時代」は終わりを告げ、収入・資産ともに富める者と貧しい者の間でその差は加速度的に拡大している。

 それは「自宅」についても同様だ。例えば、富裕層の住む家といえば、「持ち家」戸建てのイメージが強い。貧困層が住むのはだいたい木造の「賃貸」アパート。小説やドラマの世界ならば、間違いなくそうだ。だが、現実はかなり違う。

 総務省によると、日本の居住世帯の住宅数は5210万戸。そのうち、持ち家は3217万戸で、実に61.7%の人が持ち家に住んでいる。一方、借家は1852万戸(35.5%)だ(別掲グラフ)。実は、賃貸より、持ち家に住む日本人の方が多いのだ。

 さらに意外な事実だが、金融資産を保有していない世帯、つまり「貯蓄ゼロ世帯」の78.8%が持ち家に住んでいる。持ち家世帯全体の中で「貯蓄ゼロ」は約20%もおり、5軒に1軒が、持ち家はあっても貯蓄はない状態で暮らしているという(政府・金融広報中央委員会のデータより)。

 なぜ現金がないのに、持ち家に住めるのだろうか。著書『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題の作家・橘玲さんが分析する。

「マイホームの頭金で貯蓄がゼロになったというケースは多くないでしょう。ほとんどの場合、地方などで若い時から実家で暮らし、収入が充分でないため実家から出ていけないまま年を取ったりした人たちだと思われます。

 一方、富裕層が賃貸を選ぶのは、高齢になると家の管理が困難になるからでしょう。富裕層は持ち家で資産を保全する必要がないのですから、食堂や見守りサービスのあるサービス付き高齢者住宅や介護の行き届いた有料老人ホームに住み替えた方がよほど快適に老後を過ごすことができます。

 いずれは、何かと手間のかかる持ち家は『下級国民』、ライフステージに合わせて快適な生活を選択できる賃貸は『上級国民』となるかもしれません」

※女性セブン2019年10月10日号

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