田代尚機のチャイナ・リサーチ

習近平主席の肝いり、中国「ブロックチェーン大国」への道

 音声認識にしても、顔認識にしても、極めて高い信頼性を与えることができる。デジタル情報の著作権保護、売買取引情報の記録はもちろんだが、企業、研究機関から、危険物取扱所、原子力発電所、軍事施設に至るまで、あらゆるシーンのセキュリティーについて、高い信頼性を与えることができる。そのほか、医療サービスや、食品、高額ブランド品の製造販売、戸籍管理など、その応用分野は幅広い。ブロックチェーン技術の価値は計り知れない。

 民間でも、ブロックチェーン技術が重要なことぐらい、誰でも知っている。しかし、問題は、民間に任せた場合、十分な資金がその開発に注がれるかどうかという点である。

 市場の失敗という言葉がある。様々な例があるが、たとえば、「ベンチャービジネスに対して十分な開発資金が供給されない」という点もその一つに挙げられよう。将来上手く行くかどうかわからない新しい分野の研究開発はリスクが高い。銀行はもちろんだが、ベンチャーキャピタルでさえも、十分な資金を供給するのは難しい。

 そういうときこそ、国家がリスクを度外視して、国家政策としてベンチャービジネスを育成すべきではなかろうか。

 アメリカのイノベーション力は世界でずば抜けているが、それは、世界に対してオープンでリベラルな発想、能力のある者がすべてを得るような競争システムが背景にある。しかし、それは社会の構成員の間で格差を助長し、少数の勝者と多数の敗者を生み出し、それらの間に大きな亀裂を生み出してしまう。そうした悪影響が大きく蓄積されたからこそトランプ政権が生まれたのである。従来のアメリカ型資本主義が今、再構築されようとしている。

 政治が、シリコンバレーを敵視し、リベラルな思想を持つインテリジェンスの高い市民層を敵視するならアメリカのイノベーション力は大きく棄損する。

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