田代尚機のチャイナ・リサーチ

アリババが巨額の資金調達、欧米金融機関が支援する背景

 アメリカのメディアは9月27日、「トランプ政権は“アメリカ市場に上場する中国企業を上場廃止とし、政府系基金が中国市場の金融商品に投資するのを制限する”ことを検討している」と報じた。その後、アメリカ財務省や、ナバロ大統領補佐官が否定はしているが、アメリカ国内の一部には米中の経済協力を引きはがそうとする勢力がある。こうした状況で、中国企業はアメリカでの資金調達に不安を抱え、その不安に乗じて香港証券取引所が積極的に誘致を進め、それを欧米金融機関が支援するといった構図となっている。

 ペンス副大統領は10月24日、香港での民主化デモ参加者に対する中国の行動を批判するなど、経済以外でも中国に対抗する姿勢を示す演説を行っている。

 一方、アリババ集団が予定通り資金を調達できれば、香港市場で史上2番目の規模の調達額となる。香港は金融、観光、不動産が主要産業であるが、長引く民主化デモによる混乱で経済は大きなダメージを受けつつある。大型上場が成功すれば、グローバルな資金を香港市場に呼び込み、香港金融の発展を支えることになるわけだが、それはペンス副大統領の考える対中政策とは大きな隔たりがある。

 アメリカの産業界の中には、中国の成長を自らの収益拡大のチャンスと捉える企業があるという点にもう少し注目すべきだろう。

 アメリカでは、中国の通信機、AI関連などのハイテク企業に対して禁輸措置を採る動きが活発となっている。しかし、アリババ集団については、そうした対象から外れている。その最大の要因は、アメリカはGAFAの勢力圏内であり、アメリカ国内経済にとってアリババ集団は脅威となっていないからではないか。

 それでは、日本はどうだろうか。中国からの観光客によるインバウンド消費が日本経済を下支えする経済構造となりつつあり、その中国人観光客の利便性を高めるために、末端の小売店ではアリババ集団の決済システムである支付宝、テンセントの微信支付が普及し始めた。また、中国での日本製品の人気は根強い。アリババ集団の越境ECが今後、存在感を強めるかもしれない。ソフトバンクがアリババ集団の筆頭株主であることから、無理な参入はないだろうが、少しずつアリババやテンセントのサービスが日本に浸透する可能性は否定できないだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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