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年金制度は「瀕死の重傷」、制度維持のためには75歳まで働く必要も

年金制度を維持するための前提条件とは?

年金制度を維持するための前提条件とは?

 2019年8月に、5年に1度行なわれる公的年金の財政検証が公表された。財政検証は、「年金の健康診断」とも呼ばれるが、その結果について経済アナリストの森永卓郎氏は「即刻手術が必要な瀕死の重傷といえるほど深刻なものだった」という。私たちの年金制度は今、どうなっているのか、そして今後どう乗り越えていくべきか、森永氏が解説する。

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 今回の財政検証での将来の見通しは、6パターンに分けて行なわれた。そのうち、所得代替率50%以上が将来的に確保できたのは、「経済成長と労働参加が進むケース」の3パターンだけだった。所得代替率は、厚生年金に40年間フル加入時、現役世代の手取り収入の何%を年金でもらえるかという数字である。

 現在の所得代替率は61.7%だが、将来的に下がっていき、最も楽観的なパターンでも50%ギリギリとなる。現行よりも年金給付が約2割カットされるということだ。

 さらに問題なのは、「労働参加が進む」というのは、高齢になっても働き続けなければならない、ということだ。前提となっている65~69歳の労働力率を見ると、男性は現状の56.1%が2040年に71.6%へ、15.1ポイント上がる想定となっている。女性は現状の35.0%から54.1%へ、19.1ポイント上がっている。つまり、男性の7割以上、女性の5割以上が70歳まで働き続けない限り、年金制度は維持できないというのである。

 それだけではない。この想定では、男性の70~75歳の労働力率も49.1%まで高まると見込んでいる。つまり、男性の半数は、75歳まで働かなければならないのである。だが、現在の男性の健康寿命は72歳である。これでは、リタイア後に悠々自適の生活が送れるどころか、介護施設から働きに出ろというに等しい想定となっている。

 それが実現できなければ、年金制度が維持できないというのだから、ほとんど詐欺である。さらに政府は、年金制度維持のために給付期間を短縮することを画策している。現在の年金受給開始年齢は原則65歳だが、受給開始を60歳から70歳の間で自由に選択できる制度となっている。まずは、それを75歳まで繰り延べて選択可能にしようとしているのだ。

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