田代尚機のチャイナ・リサーチ

コロナ感染鈍化の中国、いち早く打ち出す景気対策の数々

感染拡大が抑制された後に課題となるのは(回復した患者を見送る長春の病院の医療従事者。Avalon/時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。3月23日現在の状況(以下同)をみると、中国を除く世界全体で累積感染者数は25万1329人、死亡者数は1万1234人となっている。ウイルスの発信源である中国の累積感染者数は8万1601人で、死亡者数は3276人。中国は「無症状」の感染者数については公表していないが、それでも中国と比べると、中国以外の地域での感染拡大が目立つようになっていることがわかるだろう。

 3月16日から23日までの1週間では、中国以外の感染者数の増加は16万4891人、死亡者数の増加は7846人であるのに対して、中国の感染者数の増加は524人、死亡者数の増加は58人に留まっている。

 イタリアでは累積感染者数と死亡者数が、世界で最も多く、この1週間で感染者数は3万4391人、死亡者数は3667人増えている。日本でもその詳細が伝えられているが、医師不足、医療機器不足が深刻で、医療崩壊の様相を呈している。10日以降、全国規模で原則外出禁止の措置がとられたものの、あまり守られていなかったようだ。欧米で感染拡大が目立つが、イタリア同様、人の移動を十分制限できていなかったことが感染拡大の最大の要因とみられ、そうした反省から、今になって各国は一斉に人の移動制限を強化する措置を打ち出している。

 一方、中国では強烈な移動制限が功を奏し、感染封じ込めの効果が出るようになり、一部の地域では厳しい移動制限が部分的に解除され始めた。もっとも、強烈な移動制限は景気の極端な悪化を引き起こしている。それを抑えるため、中央だけでなく、一部の地方政府では独自の景気対策を打ち出し始めた。

 たとえば、吉林省長春市政府は3月19日、「さらに一歩進んで消費を促進し、活力を増強し、正常な生産・生活秩序を全面的に回復させるための対策」として、以下の点を通知している。

【1】各産業における生産経営活動を全面的に回復させる
 映画館、インターネットカフェ、公衆浴場、娯楽施設、美容院・理髪店、結婚サービスなど、密閉した空間で従業員が対応しなければならないような事業についても営業を認める。

【2】積極的に様々な販売促進活動を展開する
 オンライン・オフラインを上手く活用して、いろいろな優遇サービス、特売などの実施を奨励する。不動産購入者には優遇政策を与える。

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