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アメリカが実施する「超金融緩和」がはらむ大きなリスク

【1】経済大国は、自身の政策が他国に与える影響についてよく考えなければならない。ドルが主導する国際通貨システムにおいて、FRBはこれまで世界の中央銀行としての役割を演じ、グローバル経済、金融の安定に関して重要な作用を発揮してきた。しかし、今回の政策は過度に内向きであり、グローバル経済、金融の安定を損なう可能性があり、ドル安や、アメリカに対する信用度の低下を引き起こしかねない。

【2】これが最後の晩餐でないことは明白であり、未来に備えて政策の余地を残さなければならない。各国の行った財政金融刺激策の規模、強度は非常に大きく、歴史上前例がない程だ。新型コロナは一定期間の間、我々と共存することになるだろう。今後のために一定の政策余地を残すべきである。

【3】世界においてフリーランチはない。多くの国の中央銀行が印刷機を回し無限に紙幣を刷るようなことを行っているが、歴史が示す通り、過去に同じようなことをして失敗した例は多い。空手形は必ず代償を払わなければならないことを忘れてはならない。

【4】足元の実体経済は未だに回復基調に戻ったわけではないのに、株価は既に急騰し、上昇し続けている。金融市場と実体経済は反対の方向に進んでおり、このゆがみは今までにないほど顕著である。海外の専門家は、“国内で消化された国債は債務ではなく、海外で消化された国債だけが本当の債務であるが、アメリカに関して言えば、後者も債務ではない”と説明する者もいる。過去相当長い期間について、ほぼそうであったが、将来にわたり本当にそうした状態が続くだろうか?

【5】インフレは世界経済において生活の中から永遠に無くなったのだろうか? 足元でインフレが目立つわけではないが、グローバルサプライチェーンの回復に長い時間がかかることを考慮すれば、要素費用は更に一段と上昇し、貨幣が生み出すメカニズムの変化も加わり、インフレは再燃するかもしれない。また、大規模な刺激政策について将来、如何にして抜け出すのか、その出口を考えなければならない。人々は政策を始める時には大歓迎するのに、終了する時には苦痛を訴える。

 投資家はどうしても、株価の動きを見てその理由を後付けで考えてしまう。冷静に市場を分析するためには、多角的な視野が必要になるだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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