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コロナ禍で110店休業でも最高益 ニトリ「不況に強い」独自の強み

ニトリホールディングス札幌本社(写真/時事通信フォト)

 時代や景気の移り変わりとともに、企業を取り巻く環境は絶えず変化する。30年以上にわたり、さまざまな企業を取材し続けてきた経済ジャーナリストの和島英樹さんが、今注目の企業・業界の動向を分かりやすく解説する。今回は、「お、ねだん以上。」のキャッチコピーで知られる家具・インテリア大手のニトリについて。

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 ニトリの快進撃が止まらない。新型コロナウイルスの影響で消費全体が大きく落ち込むなか、この6月に同社が発表した2021年度 3~5月期の売上高は前年同期比3.9%増の約1737億円、純利益は同25.4%増の約255億円となり、過去最高益を果たした。

 家具・インテリア業界は、全体的には外出自粛やテレワークの推進によって巣ごもり需要が増加し、追い風が吹いていた。しかし一方で、緊急事態宣言を受けて来店客が減少し休業を余儀なくされる企業も多く、業績好調の代表格である良品計画でさえ、この3~5月は上場以来初の赤字に転落。米国の子会社も破産申請する事態となった。だが、店舗が休業に追い込まれたのはニトリも同じだ。同社は3~5月の間に最大で110店舗の臨時休業や店舗の営業時間短縮を行った。

 休業や営業制限を強いられながら、これだけの増益を達成するのは「驚異的」と言っていい。なぜ競合とこれほど差が付いたのか。まずは、収納用品やキッチン用品など、コロナ禍の需要を上手く取り込み、顧客ニーズに合わせた商品を上手く打ち出したことが大きい。在宅時間が増えたことで、特にフラットデザインの多用途収納ボックス「Nインボックス」や、ネジや工具を使わずに組み立てられる収納ケース「Nクリック」などがよく売れた。また、パソコンデスクやワークチェアなど、テレワークに必要な商品のニーズも拡大した。ネット通販の「ニトリネット」では人気商品の品薄が続くなど、休業店舗の売り上げをオンライン販売がカバーしたことも好調の要因だ。

 また、そうした売れ筋商品を素早く生産・配送できるニトリならではの仕組みもある。同社は、海外に自社工場を有し、商品企画から製造を自社で行うことで機動的に商品を生産できる「製造小売り(SPA)」を行っている。SPAは、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングや良品計画も導入している手法だが、同社の場合は、自社で商品の輸送・配送まで行っている点が大きな強みだ。

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