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真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

「投資の神様」の逆張りを狙う投資家たちの「コントロールへの欲求」

ウォーレン・バフェット氏の投資行動の変化に、他の投資家たちはどう反応したか?

 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第2回は、“投資の神様”と呼ばれる米著名投資家、ウォーレン・バフェット氏の投資行動を見た他の投資家たちの心理について分析する。

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 今年8月末、バフェット氏が日本の5大商社株を買い集めているというニュースを受け、金融市場には激震が走った。なぜなら、本来のバフェット氏の投資手法は、成長が期待できる「自分が確実に理解できる」銘柄を割安で買って長期保有する「バリュー株投資」だ。言い換えれば「逆張り」。一部の例外を除き、日本株をはじめ、バフェット氏は海外の株式への投資は、あまり行ってこなかった。

 実はバフェット氏は、それ以前にも市場を驚かせる投資行動に出ていた。バフェット氏はコロナ禍で、株価上昇の見込めない米国の航空株や銀行株などを売って、持ち株を減らすことに邁進した。自身の思い描いた見立てを捨てて、損失が出そうな株を冷静に「損切り」できるのは、百戦錬磨の投資家ならではと言えるだろう。

 しかし一方で、8月中旬には金価格が上昇するメリットを享受できるカナダの金鉱株(鉱山会社の「バリック・ゴールド」)を買ったことも明らかになった。バフェット氏は、これまで「金」への関心が薄く、まして金価格が史上最高値を更新するなかで金鉱株に手を出すのは、これまでの投資スタンスと矛盾するうえ、「高値掴み」ではないかと市場を騒がせたのだ。もちろん、そこには彼ならではの投資哲学が込められているのだろう。

 そうした中で、「バフェット氏が買ったから、金はもうピークを過ぎた」と見て、保有していた「金」を手放した投資家たちがいる。ある海外投資家は、金を既に1トロイオンス(約31.1g)1500ドル以下で仕込んでおり、金価格が史上最高値の2000ドルを突破したところで売ったようだ。この投資行動は、「安く買って高く売る」という相場の大原則に忠実なものと言える。そして私の知る限り、バフェット氏の“逆”を行く投資家は彼だけでなく、ここにきて増え始めている。彼らはなぜ、“投資の神様”の逆張りを狙おうとするのか。

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