真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

今の相場は「狂騒の20年代」の再来か 忍び寄る株価暴落の周期

そして「ローリング20」は終わりを告げた

 だが、株価が永久に上昇し続けることはあり得ない。1990年代のバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショックなどを例に出すまでもなく、永久に上がり続ける相場など存在しないのだ。

 ここで、ぜひ知っておいてほしい歴史がある。

「ローリング20(狂騒の20年代)」という言葉をご存じだろうか。いまから100年ほど前、世界経済が現在と非常に似通った状況に陥った。1918年にスペイン風邪が世界的に猛威を奮い、世界のGDP(国内総生産)は3分の1にまで激減した。ただし、その2年後の1920年からは一転、世界的に株価が上昇した。それを牽引したのが、当時大量量産が始まった自動車産業の株だった。その後も株価は上がり続けたが、1929年の世界大恐慌によって「ローリング20」は終わりを告げた。

 当時米国では、生産設備のオートメーション化、高度化による「大量生産方式」が登場し、「大量生産が多くの富をもたらす」という過度な成長への期待から株価は高騰した。その時の投資家が、前述したような群集心理や、「株価は上昇する」と思い込むフレーミング効果に影響されたことは想像に難くない。

 だが、当時の米国は、今と違って需要の動向に合わせて生産や在庫を調整する発想が無かった。需要を大きく上回る供給能力を維持することはできない。そのため、企業が生産能力の拡大に取り組むにつれ、徐々に需給はだぶついた。最終的には1929年10月24日、過剰な供給能力への懸念と株価の高値恐怖感がピークに達し、ニューヨークの株価は暴落した。歴史に残る「暗黒の木曜日」だ。その日を境に世界経済は大恐慌に陥り、激動の時代を迎えた。

 翻って現在。2020年2月以降、新型コロナウイルスが世界に蔓延し、世界最大の経済大国である米国は、感染者数と死者数ともに世界最悪の状況に直面した。しかし、その中でGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)などプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業が、外出制限下におけるEC(電子商取引)やテレワークの増加を支えた。そうしたデジタル経済への期待が牽引する形で株価は上昇し、米国のNASDAQ総合指数やS&P500は軒並み過去最高値を更新。過度な成長への期待と資金余剰によって、投資家が株価上昇を強く思い込む状況は、100年前と酷似しているのではないか。

 問題は、株価の上昇がいつまで続くかだ。現実には、合理的な説明がつかないところで株価は上昇する。既に現在の米国の株価がそうだ。一時的に株価が下落したタイミングを見計らって買う「押し目買い」が入ることで、株価の上昇局面が続いている。世界中の投資家(特に保険会社や金融機関などの機関投資家)が、株式市場に資金を流入させている状況だ。

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