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今年の冬の寒さは厳しそう 「平年並」予報なのになぜ?

 10月23日に発表された3か月予報では、11月~1月の気温は、北日本で「低20%:並40%:高40%」と平年並か平年より暖かい確率が高い一方で、東・西日本および沖縄・奄美では12月と1月で平年より低い確率が40%だった。

 気温が平年よりも低い確率に振れている3か月予報は近年珍しい。地球温暖化が背景にあるためか、2014年からの過去6年間の10月発表の3か月予報を見ると、東日本や西日本では平年より高い確率の年が4年見られる。一方で、同じ期間で気温が平年より低い確率は2016年の西日本と沖縄・奄美のケースの1回しかない。今年の冬の気温が確率的に低くなることは覚悟しておいた方が良いだろう。

 平年の気温の基準になる「平年値」に、統計上の“綾”があることも、寒さを感じやすい要因となるかもしれない。10年毎に改訂される平年値は、過去30年間の観測値の平均で決まる。2011~2020年の平年値は、1981~2010年の気温を元にしており、2011年以降の気温は考慮されていない。10年毎に改訂するというルール上仕方ないもので、来年になれば1991~2020年までの平年値に改訂されるものの、地球温暖化が進展したこの10年間の気温が含まれていないのだ。

 今年の11月~1月までの東京の平年値は12.1℃、7.6℃、5.2℃であるのに対し、この4年間の平年値を平均すると、それぞれ12.6℃、7.9℃、5.9℃となり、0.5℃~0.7℃も高い。平年値より高い気温が常態化しており、その気温に慣れている我々の肌感覚としては、3か月予報の「平年並」はもはや寒く感じてしまうと言えそうだ。

 今年の冬の前半は、珍しく平年より低い確率が高いこと、そして平年値と近年の気温とのズレを考えると、いつも以上に寒さを感じる要注意の季節かもしれない。

【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)、『気候文明史』(日本経済新聞出版)、他。

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