田代尚機のチャイナ・リサーチ

株価急落どこまで? アリババへの中国当局の圧力の背景

突如、決済業務・銀行業務に参入し巨大化していった

 アリババ・グループは今でこそ世界トップテンに入る時価総額を誇る巨大企業だが、1999年に設立されたEC取引やITサービスを提供する新興企業である。

 インターネットを通じて業者と消費者の間、消費者と消費者との間を仲介する業務を行っていた新興企業が突然、決済業務・銀行業務を始めた。

 支付宝サービスを始めたときは筆者も驚いた。これは、消費者の側から見れば、デビットカード、クレジットカードで物品を買うのと変わらない。常識で考えれば、市場を荒らされ、真っ先に影響を受けるノンバンク(クレジットカード会社)が反発するはずだ。

 支付宝はすぐに、銀行預金のような存在となった。支付宝から金融商品が買えるようになった。さらに驚いたことに個人向けに融資まで始まった。なぜ大手国有商業銀行の反発がなかったのだろうか。

 そもそも、アリババ・グループは銀行業務を営む業者として、銀行保険業監督管理委員会の監督管理を受けるべきだろう。今になってようやくそうした問題が取り沙汰されているが、なぜ国務院は事業を始めた段階で、アリババ・グループの金融サービスを無許可、法令違反で禁止しなかったのだろうか。

 ジャック・マー氏は高い理想を掲げイノベーションの必要性を唱えることで有力者を魅了、周到な根回しで習近平国家主席をはじめ、共産党幹部たちの支持を得ることができた。だからこそ、ここまで成長することができたのであろう。海外の有力企業の参入から市場を守ってもらい、国内の規制を半ば無視し、ノンバンク、銀行といった強力な競合先の攻撃を躱すことができたのである。

 中国は悪く言えば、法治でない部分があり、クローニー(縁故)資本主義の存在が社会に不公平感を与えているかもしれない。しかし、良く言えば、法律や規制が現実に合わなくなった時に、素早く対応し、構造改革、イノベーションを加速させ、経済成長を最大化させることができるとも言える。

 国家による大きな支援を受けて成長しておきながら、国家の監督管理に不満を漏らす。自由な市場経済を希求する一方で、自己の優位な立場を利用し、業者に服従を求める。こうした姿勢は受け入れがたいものがあるだろう。

 ジャック・マー氏は完全に資本家の立場に退き、経営に口出ししない。経営トップのダニエル・チャン氏をはじめ、経営陣は特別扱いされないその他の企業と同じように、法律を遵守し、業界の秩序の中で成長を目指す。そうした姿がはっきりと見えて来れば、当局の“粛清”は終わるだろう。株価回復の道はなかなか険しそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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