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「春の嵐」が起きるメカニズム 過去には台風並みの記録的暴風も

 春の嵐は、3月から5月にかけて発生することが多い。5月の場合、「メイ・ストーム」という和製英語もある。ちなみに、冷たい気団と暖かい気団のせめぎ合いというならば、秋にも嵐が起こりそうに思うかもしれないが、秋の場合は南北の気温の差が春ほど大きくない。シベリア寒気が日本列島を襲う11月下旬には、南の暖かい空気は既に沖縄近辺まで南下している。春の嵐は、四季の中でも独特の気象現象と言えるのだ。

 それゆえ、桜の花見の予定を立てている人は早めに行っておいた方が良いだろう。浄土真宗の開祖である親鸞は有名な和歌を詠んでいる。

「明日ありと、思う心の仇桜、夜半に嵐の吹かぬものかは」

 これは、親鸞が9才の時に仏門に入ろうと天台座主の慈円を訪ねたところ、慈円が「夜ゆえ得度の儀式は明日にしよう」と語ったのに対して歌ったものだ。「今美しく咲いている桜を明日も見られるだろうと安心していると、夜半に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない」、つまりは「今という時を大切に生きたい」という意味が込められているが、和歌をそのまま桜の花見に当てはめ警句としたい。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で歩きながらの花見になりそうだが、親鸞が例えたように、桜の時期はうかうかしていると嵐がやってくる。機会があるうちに、まずは今咲いている桜を眺めたいものだ。

【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に2021年2月に上梓した『気候で読み解く人物列伝 日本史編』(日本経済新聞出版)、そのほか『気候文明史』(日本経済新聞出版)、『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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