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本人の希望で海に散骨「手を合わせてもしっくりこない」と戸惑う遺族も

故人の希望で海に散骨したものの…(イメージ)

故人の希望で海に散骨したものの…(イメージ)

 少子高齢化が進む今、維持管理の難しさなどから、従来の墓石にこだわらず樹木葬や散骨などを選ぶ人が増えている。供養したいという思いの深さはそのままに、身軽で安価な選択肢が広がる現代。しかし過渡期ゆえの問題もあるようだ。エンディングデザイン研究所の井上治代さんが語る。

「子供世代は樹木葬にしてほしいと思っていても、親が従来のお墓を望むパターンもあります。すでに確立されているその人の価値観、文化を変えるのは非常に難しい。最期を迎えるに当たって、無理に理想を押しつけられるのはつらいことです。

 一度、両親の意に沿う形にしてあげて、自分たちの代でお墓を引っ越してもいい。私の両親はお寺のお墓に入っていますが、父には生前に“遺骨を放ったままにしませんが、引っ越すことはあると思う”と話し、“いいよ。好きにしなさい”と許可を得ていました。私の代で先祖の遺骨もすべて樹木葬に切り替わると思います」

 一方で、お墓がないことで起きる思わぬトラブルもある。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが話す。

「例えば本人の希望でお墓をつくらず、海に散骨したけれど、遺族のなかには“海に向かって手を合わせるのは、どうしてもしっくりこない”と感じる人もいる。親は子供に迷惑をかけたくないから“墓はいらない。供養なんてしなくていいよ”と言っているが、子供の方はむしろちゃんと供養したいという意識を持っていることも多い。供養する家族の意向に配慮せず進めると、もめてしまいます」

 夫婦間や親子、親類との間で、事前によく話し合うことが大切なのだ。樹木葬を希望している女優の遠野なぎこ(41才)も声をそろえる。

「私はひとり身だし愛猫と一緒に入りたいから樹木葬を選ぶつもりですが、“残された人のために”お墓をつくりたいと考えるのは、とても素敵な考えだとも感じます。“お墓参りに行かなくちゃ”と強迫観念を与えるようなお墓づくりでなければ、墓石を建てること自体は悪いことではないと思います」

 故人を弔う場所が暗くて冷たい、足を向けたくないものになるか、温かくて癒される場所になるかは、あなた次第だ。

※女性セブン2021年5月20・27日号

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