真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

日本経済を襲う「五輪強行開催」のツケ 観光業壊滅、株価大暴落の悪夢も

 大会組織委員会は昨年末、総額1兆6440億円の大会予算を公表。これ以外にも、会計検査院は、「国は既に関連経費を含めて1兆600億円を支出した」と指摘。東京都の負担額まで合わせると、総額で3兆円を超える莫大なコストがかかるとされており、これまでの五輪で最もお金のかかる大会となる見通しなのだ。

五輪開催後に待ち受ける大混乱

 それだけの資金をつぎ込む以上、易々と中止にはできない懐事情がある。とはいえ、このまま突き進むとどうなるか。歴史を紐解くと、こんな教訓が見えてくる。

 1960年代に英仏が共同開発した超音速旅客機「コンコルド」は当初から収益化が難しいと言われてきた。だが、ここまで莫大な開発費をかけてきたからには今さら後戻りできないという思惑で運航を続けた結果、ついには2000年に墜落事故を引き起こす。それが引き金となり、運航停止に追い込まれた。この時の教訓から“わかっちゃいるけどやめられない”という心理を「コンコルド効果」と呼ぶようになった。

 残念ながら、今回の五輪強行に「コンコルド効果」が重なって見えるのは私だけではないだろう。なにしろ五輪開催に向けた障壁は多い。まず、海外からコロナを持ち込ませないという「水際対策」がどこまで実現出来るかという問題がある。いくら防疫体制を固めても、それをすり抜ける可能性をゼロにすることは不可能に違いない。

 次に、開催中に感染拡大が加速した場合はどうなるのか。レスリングや柔道をはじめ、アスリート同士が接触しなければ競技自体が成り立たない種目はいくつもある。大会関係者を全て缶詰め状態にしておくことも現実的ではないだろう。

 そして、開催後も感染拡大に歯止めがかかっていなければ、今度は日本経済が相当悪化する可能性が高まってくる。既に惨憺たる状況に追い込まれている飲食店やホテル、旅館などの観光業は、コロナの長期化でいよいよもたなくなるのは想像に難くない。そのような実体経済の悪化が株価に及ぼす影響も懸念される。

 少し前まで日銀は、株価を買い支えるため日本株ETF(上場投資信託)を大量に購入してきたが、金融政策を一部見直し、日経平均株価に連動するETFを買わなくなった。日銀の買い支えを失ったこともあって、ここのところ株価は軟調に推移しているが、そこに五輪後の実体経済の悪化も加われば、日経平均が2万5000円台にまで下がってもおかしくないだろう。

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