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予測しにくい「ゲリラ豪雨」のメカニズム 風が強くなったら要注意

ゲリラ豪雨は長くても1時間

 多くの人は、テレビの気象番組やスマホの気象アプリなどで、雷雨や発雷の発生確率を見ているだろう。これは、その日の地表付近の気温予想と上空の空気を予想し、その差を計算して積乱雲の発生確率を示している。地表付近の気温の違いはあるものの、上空に寒気が流れ込むことが予想されると、その地域が危険な場所として色付けされる。

 だが、これらの情報は雷雨の発生のある程度の参考にはなるものの、範囲が広過ぎて使い勝手としては今一つという印象を持つかもしれない。そもそも、広い範囲のどこで発生するか分からないからゲリラ豪雨と呼ばれるわけで、高い精度のコンピュータによる計算でも、数時間先となると2km格子で示すのが精一杯なのだ。気象庁は、1km格子の雷の激しさや可能性を解析した「雷ナウキャスト」を公開しているが、これも60分先までの予測だ。

 では、ゲリラ豪雨の発生を事前に予測するにはどうすれば良いか。それには、風を感じるのが良いだろう。ゲリラ豪雨は上昇流による積乱雲で発生することから、その地表近くの中心は周辺から空気を吸い込んでいる。それに伴って、周囲にはそれまでと違った強さの風が吹く。実は、ゲリラ豪雨に限らず天気に変化が起こる時は、まず風によって導かれ次いで雲が発生し、最後に雨と雷という順番になる。肌感覚という言葉のとおり、風を感じることが大事なのだ。

 もっとも、風を感じる間もなく外出先や帰宅途中などでゲリラ豪雨に遭遇してしまうことが多いかもしれない。覚えておきたいのは、ゲリラ豪雨とは、正式には「局地的大雨」なり「短時間強雨」と呼ばれること。いつどこで起きるか分からないということは、気象の世界ではそれだけ小さな範囲での現象を意味する。そのためその現象は長続きせず、長くて1時間程度で終わる。豪雨の中走る人をよく見かけるが、その時が最も雨が強い時間帯だということを知っておきたい。

【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に2021年2月に上梓した『気候で読み解く人物列伝 日本史編』(日本経済新聞出版)、そのほか『気候文明史』(日本経済新聞出版)、『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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