中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

コロナ対応でも日本と大違い 「アメリカの強さ」はどこから来るのか

アメリカのスタジアムの観客席にはマスクを着けていない観客がほとんど(Sipa USA/時事通信フォト)

アメリカのスタジアムの観客席にはマスクを着けていない観客がほとんど(Sipa USA/時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの累計感染者数・死者数が、世界でもっとも多いのはアメリカである。それだけの被害が出ているにもかかわらず、アメリカの2021年第2四半期のGDP成長率は前期比プラス6.5%となっている。日本は同前期比0.5%である。アメリカはなぜ、コロナ禍でも力強く成長することができるのか。「日本とアメリカの考え方の違いが影響しているのではないか」と分析するのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。中学・高校時代をアメリカで過ごした中川氏が、自身の経験を踏まえて、日本とアメリカの違いを考察する。

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 日本の人口の約2.6倍のアメリカのコロナ陽性者数は、累計4431万人、死者は71万7000人、日本は陽性者170万人、死者1万7600人だ(10月1日時点、「Worldometer」より)。ワクチン接種率については、Googleのデータでは1回以上が65%、2回が56%。日本は1回以上が70%、2回が59%となっている。

 7月8日、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手がMLBの日本人本塁打記録(松井秀喜氏・31本)を抜き32本目を放った際、マスクを着けていない素顔の大観衆が大騒ぎをしている様子が『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で映された。これを見たコメンテーターの玉川徹氏は「これがワクチン接種が進んだ国と、ワクチン接種が進まなくて観客をオリンピックに入れないって言っている国の違いだなって実感させられました」と語った。

 さて現在、ワクチン接種率において、日本はアメリカを上回っている。人口あたりのコロナ感染者数も圧倒的に少ない。しかしマスクは外せないし、緊急事態宣言を9月30日までやり、10月1日以降も時短営業等の措置は続けている。「ワクチンパスポートがアメリカにはある」という声もあるが、導入しているのはニューヨークなど、一部の州に限られている。

 要するにアメリカと日本のコロナ対応の違いは「胆力があるか、臆病か」という点に帰結するのではないだろうか。私自身、中高時代をアメリカで過ごしているが、その経験からも十分に理解できる。大きな違いとしては、以下のような点を実感する。

・失敗してもセカンドチャンスがあるアメリカと、失敗を許さない日本
・人間は失敗することもあると考えるアメリカと、失敗をしたら他人に迷惑をかけるから失敗は許されないと考える日本(そしてこれは失敗した場合、隠蔽に繋がる)
・自分が目立つことを考えるアメリカと、周りに合わせて目立たないようにする日本
・個々の得意分野を伸ばし苦手なものがあってもそこは割り切るアメリカと、ゼネラリストとして平均的な能力を求める日本
・怒られたら反論するか、あるいは謝ればいいと考えるアメリカと、怒られることを極度に恐れる日本
・不快なことがあったら改善しようとするアメリカと、「周囲も我慢しているから」と受け入れる日本
・他人の成功を見て自分も成功しようとするアメリカと、他人の成功を妬み足を引っ張ろうとする日本
・国民が自分の快適さのために生きるアメリカと、周りに迷惑をかけないために生きる日本

 こうした考え方の違いの積み重ねが、「日常に戻ったアメリカと、未だに自粛生活を続ける日本」ということにつながっているのだと思う。実際、田村憲久厚労相は、「(緊急事態宣言解除後も)コロナ以前の行動に戻ってよいわけではない」と語っている。

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