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地球温暖化が「紅葉の見頃」を早める可能性も 春夏の気温も影響か

紅葉に映える京都・清水寺の五重塔

紅葉に映える京都・清水寺の五重塔

同じ京都でも紅葉のタイミングはずれる

 昨年12月に科学雑誌「サイエンス」に掲載された論文によると、むしろ地球温暖化の影響で今後は紅葉日が早まるという記述まである。その理屈は、春から夏にかけて気温が高くなって光合成を行う期間が長くなり、かつ活発化するため、葉の老化が早まるというものだ。ヨーロッパの樹木での研究によるものだが、日本でも同じ傾向があるかもしれない。気象情報会社の紅葉見頃情報は、10月から11月の気温が平年比で高いか低いかを主な視点としているが、今後は春から夏の気温がどうだったかも考慮せねばならなくなりそうだ。

 紅葉の時期については、狭い範囲で微妙に異なることにも注意したい。例えば、京都の紅葉日を観測する京都地方気象台は市内の北西に当たる中央区西ノ京にある。そのため比較的近い嵯峨野・嵐山エリアでの紅葉であれば十分参考になるが、市内から北側に位置する大原・鞍馬エリアでの紅葉はもちろん早い。また、紅葉の名所としてライトアップされる東福寺は、JR東海道線の南側で高度が低いにもかかわらず、紅葉の見頃は京都地方気象台の紅葉日よりも1週間程度早い。おそらく、鴨川に沿って北風の冷気が流れ込むことが要因のひとつだろう。

 結局のところ、紅葉の見頃はそれぞれの地域の地元の観光案内などから、昨年の情報を知ることが一番良いだろう。数日ずれたとしても、見頃を大きく外す失敗は考えにくい。サクラの満開日が1週間足らずであるのに対し、紅葉の見頃は各地とも2週間程度と長い点からすれば、まずは日取りを決めて、その上で見頃の場所を探すのが良さそうだ。気象情報会社の「紅葉見頃情報」は、日本各地の紅葉の名所はどこにあるかという大まかな視点で活用したい。

宮島の千畳閣から見る大銀杏

宮島の千畳閣から見る大銀杏

【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に2021年2月に上梓した『気候で読み解く人物列伝 日本史編』(日本経済新聞出版)、そのほか『気候文明史』(日本経済新聞出版)、『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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