景気回復の兆しのなかで、いち早く好業績を印象づけているのが、三菱、三井、住友の三大財閥系企業だ。その波及効果は、日本経済全体を押し上げる勢いにもなっている。
財閥系企業の復活の背景には、コロナ禍で改めて企業間の結びつきが重要になってきていることがある。
世界的な感染拡大で原材料の調達が難しくなり、部品のサプライチェーンも寸断された。メーカーは「つくれば売れるのに材料や部品が入らない」、販売会社は「製品がないから売りたくても売れない」と川上から川下までビジネスチャンスを失う状況が生まれている。だからこそ、財閥グループの結束力が見直されているのだ。
「三菱の社員はキリンビール、住友はアサヒビール、三井はサッポロビールを飲む」
かつてそう言われたように、日本の企業社会では、財閥グループの企業が互いに株を持ち合い、資本関係を結んでグループ企業の製品を優先的に使う系列取引が行なわれていた。それを米国から「日本の不公正な商習慣」と批判され、株の持ち合い解消が進み、系列取引は姿を消していった。「しかし」と、マーケットアドバイザーの天野秀夫氏が語る。
「三菱系の日本郵船が三菱造船と温暖化対策用の『液化CO2』運搬船の共同開発に乗り出すなど、昔ほどではないにしても、現在も同じ財閥系企業の間の取引は多く行なわれているとみて間違いないでしょう。財閥系グループは一種の異業種連合体。それぞれの分野のビジネスに取り組んでいても、何かあれば連携して対応ができる。効率性と柔軟性を持つ連合というのが財閥の強みになっている」
M&Aにも利点がある。11月30日、商船三井が関連会社である不動産事業のダイビル、港湾運輸の宇徳をTOB(株の公開買い付け)で完全子会社化すると発表した。
「財閥系企業はグループ内の企業再編もやりやすい。もともと連携が強い間柄なので、敵対的TOBにはなりにくいというメリットがある」(同前)