潜在力ある街を世界的な都市に
21世紀の“繁栄の方程式”は、アメリカのベイエリアや中国の深センなどのような、世界から人、カネ、企業、モノ、情報を呼び込む「メガリージョン(※大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)」をつくることだ。そのためには一過性のお祭りではなく24時間365日、人、カネ、企業、モノ、情報が集まる仕掛けが必要となる。
そういう意味では、客層や期間が限られるカジノやMICE(※企業・学会・国際機関などの会議や展示会・見本市)より、国内外から老若男女が毎日訪れるテーマパークのUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のほうがよほど有望だ。大阪市は2005年に撤退したが、IRにカネをかけるくらいなら、再出資してUSJを強化すべきだろう。
メガリージョンは、新刊『経済参謀』でも詳述したように日本が“老衰”から脱するための起点となる。大阪もその中核になり得るポテンシャルを持っているが、現状では21世紀型メガリージョンに発展するのは難しい。職住接近の24時間都市ではないからだ。
大阪が職住接近の24時間都市になるためには、経済人や富裕層が大阪の都心部に居住しなければならない。ところが、彼らの大半は大阪市内ではなく兵庫県の夙川や芦屋、奈良県の生駒などに住んでいて、大阪都心のオフィスで仕事を終えると北新地で1杯やって自宅に帰る。平日の夜も週末も、大阪にはいないのだ。
かつて私はマッキンゼーの大阪所長時代、大阪城公園をニューヨークのセントラルパークに見立て、その周辺を高層マンションが建ち並ぶ高級住宅街として再開発するアイデアを提案したが、大阪の経済人たちは全く関心を示さなかった。
御堂筋の両側も、もぬけの殻になっている船場の繊維街や医薬品メーカーの本社があった道修町を再開発すれば、交通の便が良い一等地だから超一流の住宅街に生まれ変わると思う。
大阪の最大の問題は、繁栄するためのマスタープランを考える人がいないことだ。東京は千代田区の番町、港区の青山、六本木、白金、渋谷区の松濤といった高級住宅街があり、経済人が都心部に住む職住接近の24時間都市になっている。大阪もそういうトータルの街づくりコンセプトをつくって世界から投資と富裕層を呼び込むべきなのだ。
そもそも大阪は、天下統一を成し遂げて大阪城を築いた豊臣秀吉が1からつくった城下町である。今の大阪には“現代版の秀吉”が必要なのだが、吉村知事も松井市長もお祭り志向のままである。大阪府と大阪市などを統合する「大阪都」構想は、東京に対する劣等感の裏返しでしかない。
大阪がメガリージョンになって京都・奈良・兵庫・和歌山と連携して「関西道」を形成すれば、一気に繁栄することは間違いないのに、実にもったいない話である。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館刊)等、著書多数。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号