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鰻の町、愛知・一色町 従来の2倍の大きさでも身が柔らかい鰻の養殖に成功

愛知県西尾市一色町は明治時代から養殖の歴史を誇り、養鰻専用の水道網も充実した“鰻の町”(撮影/太田真三)

愛知県西尾市一色町は明治時代から養殖の歴史を誇り、養鰻専用の水道網も充実した“鰻の町”(撮影/太田真三)

 2022年夏の国産活鰻の卸価格は前年同期比で約4割高く、燃料費などの高騰も背景に値上げせざるを得ない鰻料理専門店も相次いでいる。一段と“高値の花”と化している鰻だが、庶民でも手が届く可能性が出てきた。

 愛知県西尾市一色町は、明治時代から続く養殖の歴史を誇り、矢作川の清水を引く養鰻専用の水道網(総延長100キロ)が町内84業者にはり巡らされた“鰻の町”だ。この地の一色うなぎ漁業協同組合が今年2月、同県水産試験場と共立製薬と共同で取り組む養殖試験で、通常の2倍大きいサイズに成長させても身が柔らかい鰻の生産に成功した。同組合・総務課主任の鈴木健太氏が語る。

「今まで鰻は大きく育てようとすると身が固くなってしまう問題がありました。しかし、県水産試験場主導で研究を行ない、大豆イソフラボンをもとにした餌を与えることで、従来の2倍(体重400~500グラム)の大きなサイズに成長させても、これまでの大きいサイズの鰻と比べて皮も薄い、高品質の美味しい鰻を育てられる技術を開発しました」

サイズが通常の2倍にまで成長した大型鰻。下は通常サイズの鰻(写真提供/一色うなぎ漁業協同組合)

サイズが通常の2倍にまで成長した大型鰻。下は通常サイズの鰻(写真提供/一色うなぎ漁業協同組合)

 この2倍サイズの鰻の蒲焼(長焼き)を今年3月、同組合が町内で経営する鰻料理店「うなぎ処 いっしき」で1週間だけ1尾3980円で試験販売したところ、開店とほぼ同時に連日売り切れ。同店の通常サイズの同メニューは1尾2420円と元々安く提供しているが、2倍サイズの鰻だと2尾分以下の値段で2尾分の身をお得に食べられると大好評だった。

「鰻をより大きく成長させ、1尾当たりの量を増やし、激減している稚魚シラスウナギの資源保護を目指す取り組みです。商業ベースでの価格は未定ですが、今年10~11月頃には第2弾を販売できる見通しです」(同)

「うなぎ処 いっしき」の人気メニュー「うな丼(1尾)」は吸い物・漬物・デザート付で2860円。組合直営ならではの安さ(撮影/太田真三)

「うなぎ処 いっしき」の人気メニュー「うな丼(1尾)」は吸い物・漬物・デザート付で2860円。組合直営ならではの安さ(撮影/太田真三)

 現在、同組合の養鰻場では、冬の出荷に向けて2倍サイズ候補の鰻がすくすくと育っている。午前4時台から職員が餌の練り作業を行ない、約1万坪の敷地に広がるビニールハウス内の養鰻池の鰻に与える。量産化されれば安定供給、手頃な価格にもつながる可能性がある。全国各地で食べられる日が待ち遠しい。

※週刊ポスト2022年7月29日号

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