ライフ

【60代女性・私の宗教放浪記】「手相を見せて」から連れて行かれたビデオセンター

「あのさ、なら言うけど、地獄だか導きだか知らないけれど、ここが神聖な家? 笑わせるわッ! どうしたらこんな安っぽいジグソーパズルを飾ろうなんて発想が出るの!?」と、来たときから目障りだった掛け物を指差して捲し立てちゃった。

「こ、これはですね、ここに集まった人が力を合わせて作ったジグソーパズルです」と中年女は必死に言うんだけど、目が泳いでいる。それで、地獄だ、サタンだ、カルマだと言っていたけれど、なぁ~んかねぇ。

 その後、何がどうなったかは忘れたけれど、中年女は退室し、K子さんが手に印鑑のパンフレットを持ってきて、「これだけは作ってもらえませんか?」と言ってきたの。まぁ、ちょうどちゃんとした実印が欲しいと思っていたところだし、言いたいことを言って啖呵を切ったバツの悪さもある。

 それで、「水牛の角を彫って15万円」と言われたのを4万円まで値切って、しばらくしてから出来上がった印鑑を受け取ることにした。

 そのときK子さんがおかしなことをつぶやいたんだよね。あの中年女のことを、「霊的にすごくレベルの高い人で、彼女に3000万円、5000万円と献金する人がいるんですよ」と言った後で、「私、来年の秋になったら結婚できそうなんです」とも。

「どんな人と結婚するの?」と聞くと、「たぶん外国の人だけど、私はまだそこまで霊的なレベルに達していないから」と口ごもるの。

 桜田淳子が参加した合同結婚式や強引な霊感商法がマスメディアを賑わしたのは、その翌年の1992年で、それで私は一連のことが腑に落ちたわけ。

第3回につづく第1回から読む

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2022年9月15日号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。