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日本の物価高はアメリカから1年遅れ その対策は日銀にとって喫緊の課題ではない

日銀は物価高対策に本腰を入れるつもりはないのか(黒田東彦・日銀総裁/時事通信フォト)

日銀は物価高対策に本腰を入れるつもりはないのか(黒田東彦・日銀総裁/時事通信フォト)

 驚異的なペースで進む円安によるもっとも直接的なダメージは、物価高だ。石油・ガスなどのエネルギーや、小麦をはじめとする食料品の多くを輸入に頼る日本にとって、円安によって輸入価格が上がれば、どうしても物価高騰は避けられない。

 今年に入って、ガソリンや電力、小麦製品、食用油、缶詰、加工肉、飲料、菓子、日用品などが相次いで値上がりした。帝国データバンクの調査では、10月の値上げは今年最多の6700品目に上り、値上げラッシュは今年最大の山場を迎えた。

 だが、これで終わりではないと、国際認定テクニカルアナリストの横山利香さんが言う。

「この物価高は、世界的に原油や食料の価格高騰が続いている中、円安が追い打ちをかけて起きています。これまで政府はガソリン価格抑制のために石油卸業者に補助金を出してきましたが、それも減額する方針。今後はもっと厳しい物価上昇に見舞われ、私たちの生活はさらに苦しい状況になるでしょう」

 この円安の根本的な要因は、日米金利差の拡大にある。アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、アメリカ国内の物価高対策として金利を引き上げている一方、日銀は金利を低いまま保つ金融緩和を続けている。その結果、金利の高い米ドルを買って、金利の低い日本円を売る動きが、世界的に高まり、円の価値が暴落しているのだ。

「日本の国力の低下は、円安に拍車をかけていると考えられます。かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』ともてはやされ、円高だった時代、日本企業は生産拠点を人件費の安い海外に移し、それが主流となりました。その結果、輸入に頼らざるを得なくなった。当時は日本製であれば高くても売れましたが、いまはそうではありません。日本の製品は品質や性能はよくても、世界の消費者が買いたくなるような魅力や驚きが、もうないのです」(横山さん)

 魅力のない国の通貨の価値が下がり、売られるのは当然のこと。事実、円の価値は世界的に見ても大きく下がっている。明治大学政治経済学部教授の飯田泰之さんが解説する。

「2019年平均を1とすると、日本円の価値は20%強落ちています。韓国ウォンも15%、英ポンドやユーロも10%以上下落している。円安というよりは米ドルだけが高くなっているといえますが、その中でもやはり、円の下落率は大きい。一方、米ドルがこれほど高くなっているのは、コロナ禍やウクライナ問題という世界的な危機によって、世界中が資産を米ドルで持とうとした結果でしょう」

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