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『東京貧困女子。』中村淳彦さんインタビュー 「貧困を消費するな」批判をどう考えるか

貧困に対してどう向き合うべきか(写真:イメージマート)

貧困に対してどう向き合うべきか(写真:イメージマート)

 いまや大きな社会問題となっている「貧困」。昨今、それが拡大し、深刻化していることは報道で知っていても、果たしてどこまでそれをリアルに感じているだろうか。

 漫画『東京貧困女子。』は若い女性たちが貧困に陥っていく過程を描いている。第1巻の冒頭に登場するのは夢が叶って国立大学医学部に入学した女子大生。親の援助が得られず奨学金を利用するが、授業料のほか部活にも入ってキャンパスライフを謳歌しようとするとたちまちお金がなくなり、風俗で働くことに──コロナ禍で仕事を失った女性など、現在進行形の貧困が女性たちの心情とともに描かれ、胸に迫る。現在は、最新刊となる第6巻が発売されたばかりだ。

 原作は、ノンフィクション作家の中村淳彦さん。貧困女性に取材した、東洋経済オンラインでの中村さんの記事は、1億2000万という驚異的なページビューを記録した。

「ケタが2つぐらい違っていて、なんでこんなに読まれたのか、自分でもよくわかりません。ひとつ言えるとしたら、日本の社会って、女性から賃金を下げていくんです。まず女性が、非正規化のターゲットになった。ぼくの感覚だと、2000年代の半ばから、ふつうにフルタイムで働いても自分一人の生活を支え切れない人が出始めました。生活できなくなったらどうするか。ダブルワークで長時間労働するか、風俗や水商売で働くか。若い人が、風俗で働くっていうのがどんどんふつうになってきている現実が背景にあると思います」

 漫画家は『中学校狂師』などの小田原愛さん。

「貧困女性の問題は、小田原さん自身もよく知っていて、原作者から見ても、この漫画はすごくよくできています」

人は、聞く側が受け入れられる範囲でしか話せない

 6巻では、父親から激しい暴力を受けて育った元AV女優が描かれる。これまでに登場した女性の中でも一番と言っていいほど、過酷な人生を送ってきた人だ。

「ぼくがこれまで取材してきた中でも3本の指に入る厳しい話です。相手のほうからぼくを名指しで話を聞いてほしいと電話してきたのも、漫画に描かれている通りです。数日後には精神科病院に措置入院になるのが決まっていて、帰ってこられないかもしれないから、その前に話を聞いてほしい、ということでした。

 なぜ連絡してきたのか、わかりません。何もすることがなくて、聞いてくれる人がいるなら呼んでみようか、ぐらいの遊び半分だったかもしれない。自分が生きた痕跡を何かひとつぐらい残しておきたいと思ったのかもしれません」

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