中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

それでも「日本サイコー」ですか? 海外の高収入日本人報道に嫉妬しているだけでは見えてこない現実

ニューヨークに渡った日本人寿司職人は、圧倒的に稼ぎが増えたと報じられている(写真:イメージマート)

ニューヨークに渡った日本人寿司職人は、圧倒的に稼ぎが増えたと報じられている(写真:イメージマート)

 急速に進行した円安に加え、日本の賃金がいっこうに上がらないことで、「海外に移住した日本人はこんなに高収入を得ている」といった報道を目にする機会が増えた。ネットニュースでこうした記事が掲載されると、そのコメント欄には少なからず批判の書き込みも見受けられる。その心理はどこから生じているのか、そして今の日本が置かれているのはどんな状態なのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。

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 最近は「海外に行ったらこんなに稼げた!」という記事をよく見かけるようになりました。「東京で年収300万円だった寿司職人がニューヨークで年収8000万円」「ハワイに移住したウエートレスの月収が100万円」「シカゴのパン店店員の月収が70万円で1年で260万円の貯金ができた」……といった感じです。

 普通に考えれば「へー、よかったね」でいいと思うのですが、ネットの書き込みを見ると「嘘をついている」「年収ではなく年商じゃないか?」といった、そもそもの数字を認めないものがあるほか、それ以外にも様々な批判を見かけます。だいたい以下のようなパターンです。

【1】でも、アメリカは物価が日本の3倍するから出費も多い
【2】日本はサービスや製品の質がいいのに安いから羨ましくない
【3】治安なども含め、総合的には日本の方が暮らしやすい

 2019年には日本経済新聞の「年収1400万円は低所得」という記事が話題になりました。アメリカの調査において、サンフランシスコでは年収1400万円の4人家族を「低所得者」に分類したというのです。この話題が出た時も、アメリカの給料水準を羨ましがる人に対し、「お前はランチに3000円、家賃に50万円払いたいか?」というツッコミが入ったものです。

 いやいや、問題はそこではないでしょう。サンフランシスコのIT系の人材が、日本に来た場合、ドル建てで給料をもらったら、余裕で富豪の住む東京・広尾や六本木に住むことができます。上記「年収1400万円の低所得」の人だって、円安が進んだ今は日本なら年収2000万円近くになっていることでしょう。結局、経済力が強い国の人間は、世界のどこでも暮らしていけるというのが現実なのです。

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