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天才起業家・イーロン・マスク氏に問われる経営者の資質 必要なのは有能な“伴侶”か

イーロン・マスク氏はどこへ向かう?(イラスト/井川泰年)

イーロン・マスク氏はどこへ向かう?(イラスト/井川泰年)

 希代の起業家として注目を集めるイーロン・マスク氏だが、急ピッチで進むツイッター社の企業改革は賛否両論を呼んでいる。国内外で数々の起業家を見てきた経営コンサルタントの大前研一氏は、マスク氏をどう見るか。

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 日本の防衛費に相当する約6兆円でツイッターを買収してCEO(最高経営責任者)に就任したイーロン・マスク氏が、約7500人いた従業員の半数を即時解雇した上、残った従業員に「長時間猛烈に働くか退職か」と二択を迫り、さらに少なくとも1200人が退職したという。この強権的なリストラは大きな物議を醸している。

 また、2021年1月に起きたアメリカ議会襲撃事件を受けて「暴力行為を扇動する恐れがある」という理由でツイッターが利用できなくなっていたドナルド・トランプ前大統領のアカウントを、ユーザーの投票結果に基づき「民の声は天の声」と言って復活させた。この見え見えの復活劇で、アメリカ人の半数はアンチ・マスクになった。

 マスク氏は発明家・起業家としては天才だ。これまでに電子決済サービスのペイパル、宇宙開発企業のスペースX、EV(電気自動車)メーカーのテスラを設立して軌道に乗せた手腕は素晴らしいと思う。だから、私は本連載や著書『経済参謀』(小学館)などで、誰もチャレンジしていない分野において独創的なやり方で「0から1」を生み出してきたマスク氏の発想力・構想力を高く評価している。

 しかし、その一方では思慮に欠けた言動が多い。

 たとえば、2018年のエイプリルフールには、株価が大幅に下落していたテスラが「経営破綻した」とツイッターに投稿した。あるいは、同年6~7月にタイで少年たちが洞窟に閉じ込められた遭難事故の際は、救出用のミニ潜水艦を建造したが使われず、それについて「宣伝のためのスタンドプレー」と批判した洞窟探検家を侮辱的な単語を使って罵った。いずれも無意味で不要なことである。

 そもそも「言論の自由」を擁護するためにツイッターを買収したというマスク氏の主張も疑問である。無責任なヘイトツイートやネガティブツイートを野放しにして(マスク氏は「目につきづらくする」としているが)、権力者や差別主義者などが自分の言いたいことを──たとえ法律の範囲内であっても―好き勝手に投稿できるようにするのは、決して言論の自由・表現の自由ではない。権力に対する言論の自由・表現の自由は保証されねばならないが、個人に対する誹謗中傷や差別表現は厳格に制限されるべきである。

 マスク氏は真空チューブ(トンネル)の中に超高速鉄道を走らせる全く新しい交通システム「ハイパーループ」を開発しているが、カリフォルニア州に建造したテスト用チューブがなくなっていることが明らかになり、計画が頓挫した可能性も取り沙汰されている。もしかすると、マスク氏の“迷走”が始まっているのかもしれない。

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