産地偽装を理由に返金してもらうことは可能か?(イラスト/大野文彰)
消費者を欺く行為である食品の産地偽装。もしも、スーパーなどの小売店で産地偽装があった場合、過去に遡って購入代金を請求することはできるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
近所のスーパーで国産として販売していた肉が実は外国産だったと発覚しました。そこでは何年も前から産地偽装をしていたようです。
私は2年ほど前から何度もそのスーパーで肉を購入しており、とても腹が立ちます。過去に購入した分の代金を返してもらうことはできますか。過去1年分についてはレシートを保管しています。(島根県・68才・主婦)
【回答】
そのスーパーは外国産と知りながら、国産表示で顧客を欺いて国産肉と誤解させて売ったのですから詐欺です。
騙されてした契約は取り消せます。契約を取り消せば契約が無効になり、返金を請求できますが、偽装肉を返す義務が生じます。実際には、消費して返せない外国産肉の価格相当額が代金から減額されることになります。
詐欺で顧客に被害を被らせたスーパーは不法行為をしたことにもなり、顧客の損害を賠償する義務があります。
失った代金が損害になりますが、食べた利益もあるので、外国産肉相当の価値を損益相殺として控除した額が賠償額になり、結局、契約取り消しと同じことになります。これらの控除額はスーパーに立証責任があります。一方で、あなたは詐欺に遭ったことの証明が必要です。
レシートが残る過去1年間、スーパーの販売肉がすべて国産を偽装した肉であれば、すべてが詐欺といえます。しかし、国産表示肉と外国産表示肉の双方を販売していた場合、購入品が国産表示の肉の購入であったことがレシートを見てわかる必要があります。