敷地内でコインパーキングを営業する高校も(写真:イメージマート)
経済的な不安、政治的な不安、痛ましい事件……なんとも暗いニュースが多いこの時代。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏は、2つのニュースに今の時代を感じたという。オバ記者が綴る。
学校の敷地内にコインパーキング
時代の曲がり角、交差点に立っている。いや、すでに右折か左折かしているかもしれない。このところ、そんなことを思って気落ちしたり、身を引き締めたりしている。
というのも、私の気持ちを揺さぶったニュースが2つあったのよ。
ひとつは、「創立100年を超える伝統校・私立札幌静修高校(北海道札幌市中央区)の敷地で、大型コインパーキングの営業が始まる」というニュース。
「学校の敷地内に不特定多数の車両を24時間出入りさせるなんて、不審者対策は大丈夫なの?」という懐疑的な声を押し切ってまでも、老朽化した校舎の改築費を捻出することを優先したのだから、経営難はかなりのものとみた。
あれは20年前のこと。私の知人が某私立女子大学の講師に採用されたとき、学長から言われたそうな。「これからあなたが応対するのはコギャルではありません。顧客です」と。入学した学生を退学させずに4年分の学費を滞りなく納めてもらうために大学がどれほどの先行投資をしたか、数字を挙げて説明された、と知人はあきれ顔だったけれど、いま振り返ると、そんなのまだまだ序の口だったのよね。
20年前といえば2005年。「人口減少で、日本はこれまで通りにはいかなくなる」と言われ出した年で、初めて死亡数が出生数を上回ったの。出生数はそれからずっとダダ下がり。以来、「人口減少」という言葉にすっかり耳慣れてしまい、「だからどうしろっていうのよ」と、この話題になるとしまいにはキレ出す人もいたりして。
「まぁ、そうカリカリしなさんなって。そのうちなんとかなるんじゃね」。これは物心ついたときが高度成長期で、20代半ばから30才前後にバブル期を迎えた私たち“ノー天気世代”の特徴だ。人を「明るい・暗い」と二分化させて、「明るい」が絶対的な価値だったから、悲観的なことは言うだけで嫌われる。だから暗いニュースを脳みそから追い出す能力ばかり養ってきた──と、これは人様の話じゃない。私自身のことだ。
しかし、人間、どこかでツケ払いをすることになるんだね。4年前、母親の介護で4か月間帰省したときに、現実が目の前に迫ってきたの。
18才で実家を出た後、郷里から目を逸らしてきた現実。たとえば子供の頃、実家のある集落には駄菓子屋があり、八百屋があり、ご隠居も働き盛りの男衆も見習いの若者もいたのに、いまは家も人もまばらのゴーストタウン。夜になると真っ暗だから不気味で、介護していた4か月間、とうとう日が暮れてからは家から出なかったものね。