60才を過ぎてから始める投資をどう考えるか(イメージ)
進学、就職、結婚、子育てと、人生の節々であらゆる「選択」を乗り越え、残るは悠々自適な老後生活……と、安心するのはまだ早い。60才を過ぎてからこそ、人生最後に先立つものを確保するためには、やり直しのきかない「二択」の問題がいくつもある。そのうちのひとつが、「投資」についての考え方だ。
昨年スタートした「新NISA」により、新たに投資に挑戦するシニアが増えた。だが実のところ、60才を過ぎたら老後資金づくりに「投資」を選択するのは間違いだという指摘もある。
特に、60才を過ぎて「投資で増やして、生活費を工面したい」というのは非現実的ともいえる。社会保険労務士の井戸美枝さんが語る。
「新NISAは長期投資を前提としており、たとえ10年運用しても、増やせる保証はありません。老後資金に悩むような一般的な経済状況のかたが60才を過ぎてから焦って投資を始めたところで、急に大きなお金を手に入れられるものではないのです」
2026年度には65才以上を対象に配当や分配金が非課税になる「プラチナNISA」や、認知症になった人の資産運用を家族が引き継ぐ「家族サポート証券口座」など、シニアの資産運用を後押しする制度がスタートする見込みだが、井戸さんはいずれも手を出すべきではないと注意する。
「認知症になった人の運用資産を家族が引き出せたり、本人のために使える制度ならまだしも、運用を続けさせる必要があるのか疑問です。お金のある高齢者に、何が何でも投資させようとしているように見えます」(井戸さん)
投資に頼っていいのは、老後の「生活費」ではなく、人生後半戦を楽しむための「余暇費」。それも、できるだけ安全な方法で運用すべきなのだ。
※女性セブン2025年7月3・10日号