「生前贈与」しないという選択肢も(イメージ)
人生の節々であらゆる「選択」を乗り越え、残るは悠々自適な老後生活……と、安心するのはまだ早い。60才を過ぎてからこそ、人生最後に先立つものを確保するためには、やり直しのきかない「二択」の問題がいくつもある。そのうちのひとつが「相続」の問題だ。
老後資金を整理するうえで、子供や孫に残す資産のことを考える人もいるだろう。だが、人生の残り時間が少なくなってきてからは、次の世代のことよりも、自分自身のことをいちばんに考えるべきだ。夢相続代表で相続実務士の曽根惠子さんが言う。
「年代が上の人ほど“子供に資産を残したい”という思いが強い傾向があるのですが、がまんして不自由な暮らしをしてまで財産を残す必要はありません。どれだけ財産を残すかを考えるよりも、自分たちが暮らしやすいよう、自宅をバリアフリー化したり、通院や買い物に便利なところに引っ越すなど、有意義にお金を使う選択を」
わざわざ生前贈与をすると損になることが多い
そうはいっても、使い切れなかったお金や持ち家など、最終的にはある程度の「財産」は残るもの。それらは自分が亡くなった後に「相続」となるか、生きているうちに「生前贈与」することになる。相続税がかかることを気にして生前贈与するのではなく、「相続まで待つ」のが正しい選択だ。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが言う。
「わざわざ生前贈与を検討すると、むしろ損になることが多い。
そもそも、財産総額が『3000万円+600万円×法定相続人の数』を超えなければ相続税は非課税になりますし、かかるとしても、同じ財産額なら贈与税よりも相続税の方が安く済みます」(明石さん・以下同)
自分たちの財産は、自分たちが亡くなるまで、渡さなくていいのだ。生きているうちにすることといえば、なるべく早く遺言書を作成することだけ。
「80代を過ぎてからだと、たとえ認知症になっていなくとも判断力や思考力は衰えており、対策を盛り込んだ遺言書をつくるのは難しい。遅くとも70代までに、遺言書の作成は済ませておきましょう」