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河合雅司「人口減少ニッポンの活路」
石破政権「地方創生2.0」の課題

【地方創生2.0】人口減少に伴う地方消滅を避けるための「集約政策」がなぜ打ち出されないのか? 政治的タブーと有識者会議の限界

地方創生に取り組んで10年以上経つが…(写真は、群馬県のデジタル教育施設を訪れた石破茂首相/時事通信フォト)

地方創生に取り組んで10年以上経つが…(写真は、群馬県のデジタル教育施設を訪れた石破茂首相/時事通信フォト)

 石破茂首相はいま、「令和の日本列島改造」というスローガンの下に「地方創生2.0」なる政策を推し進めようとしている。その基本構想で、一番重要視されたのは、従来と同じく「東京一極集中の是正」だった。東京圏から地方への若者の流れを倍増させることを数値目標として掲げているが、人口激減社会で人口を「分散」させることには専門家からの批判が少なくない。

 人口減少ニッポンが行き着く衝撃的な未来と、そこへの現実的な対策を提示した話題書『縮んで勝つ』の著者で、内閣官房の「新しい地方経済・生活環境創生会議」の委員も務めた河合雅司氏が、有識者会議での議論を総括する【全3回の第3回。第1回から読む

 * * *
 厚生労働省が6月4日に公表した「人口動態統計月報年計(概数)」で、2024年の日本人の出生数が初めて70万人を下回った(68万6061人)ことが大きな話題となった。大台割れという以上に注目すべきは、前年比増減率が5.7%減となったことだ。

 3年連続で5%台のマイナスは、「急落」と言うべきハイペースの落ち込みであり、同時並行で進む死亡数の増加と相まって、半世紀以内に日本人人口が「半減」する可能性も出てきた。

 人口の激減が避けられない以上、少なくなる働き手で地域社会を機能させることを考えなければならない。そのためには、人口減少に合わせた社会のダウンサイジングが必要だ。地域ごとに、ある程度の人口規模を確保すべく集約化を図り、同時にコンパクトな社会を実現するのである。

 たとえば、中枢中核都市など全国各地にある中心的な地方都市を核とし、周辺地域の人口を寄せ集めて人口集積地を形成する。これは、市町村合併とは異なる考え方だ。中核となる都市にすべてを集約しようということでもない。

 民間企業や店舗などが経営的に成り立ち得る規模の人口集積を図り、働き手の人数が減っても回るようにするのが目的だ。中核となる地方都市をコンパクト化すると同時に、周辺の集落単位ごとに小さな人口集積地を形成して、中核となる地方都市と一体的な商圏を築く“コンパクト・プラス・ネットワーク”の形もあり得る。

【イメージ】30万人規模の人口集積地を形成する(出所:小学館新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』河合雅司著)

【イメージ】30万人規模の人口集積地を形成する(出所:小学館新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』河合雅司著)

 同時に、各地を「稼げる地方」へと生まれ変わらせることも必要となる。それには、各地の人口集積地に存立する企業が“人口減少仕様”へと転換する必要がある。

 人口激減社会では内需が大きく縮むため、量的拡大型のビジネスモデルは通用しない。高付加価値化による質的成長を図り、各企業が外国マーケットと直接取引することが求められる。企業が存続し得なくなってしまえば、雇用が創出されず人口集積地としての持続も望めない。

 人口減少社会で地域の多様性を残そうとするならば、各地域が東京とは異なる独自の経済発展の軸をうち打ち立てる必要がある。それには、地域が持てる力を結集することである。

 政府に求められるのは、企業経営モデルを維持するためのために補助金を分配するのではなく、人口減少に耐え得る経営モデルに転換するための投資を促すことである。要するに、「分散と分配」から「集約と投資」へ政策をシフトすべきなのだ。この点については、私に限らず、人口減少問題の専門家の多く認識を共有するところである。

次のページ:有識者会議の委員や官僚らにも理解者はいるが…

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