自宅を“負動産”にしないためにどう準備するか(イメージ)
人生の後半戦は、就労や収入も変化しての“新生活”がスタートする。老後資金を巡って、ファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんは、「まずは資産を把握すること」が大切だと話す。
「家、車、証券、それらの資産にどのくらいの価値があるか算出する。退職金や年金など入ってくるお金を把握する。そして、必要であろう支出を試算する。これらをやらないと、むやみに投資に走って損をしたり、過度な節約で精神的な余裕がなくなったりといったことになりかねません」
資産、収入、支出を把握したら、次にすべきはそれらを整理すること。ラクしてトクする整理術を知って、60才以降にやっておくかどうかが老後の明暗を分けるのだ。
実家の売却は3年10か月以内に
自宅が持ち家なら、資産状況に応じて“負動産”とならない準備をしたい。司法書士で東京国際司法書士事務所代表の鈴木敏弘さんが話す。
「相続を考えたら売らない方がいい。小規模宅地等の特例を利用すれば、夫に土地の所有権がありそれを妻に相続する場合、評価額は8割減らせます。1億円の土地でも2000万円になりかかる税金もかなり抑えられる。
住居についても20年以上の婚姻期間があるなど条件に合えば2000万円まで非課税で贈与できる『おしどり贈与』があります。ただ、生活資金に余裕がないなら、無理に持ち続ける必要はないでしょう。売却して、現金にするのは自然なことです」
ファイナンシャルプランナーの横川由理さんは“賃貸派”だ。
「家に特別な思い入れがあって、終の棲家にする!と決めているなら別ですが、維持には固定資産税もかかるしメンテナンス費用も負担になります。夫とふたりになったなら、家のサイズを小さくすることも兼ねて処分してお金に変えた方が、食費や交際費に回せて生活が豊かになることもある」(横川さん・以下同)
横川さんは、家財の整理がお金の整理につながると続ける。
「60才を過ぎたら、大きな家具は思いきって処分しましょう。そうすると自然とモノも買わなくなって、増えなくなる。それで小さな賃貸に引っ越せば、家族で住んでいた大きな持ち家を維持するよりもずっとコスパよく暮らせます」
高齢の親から実家を相続する可能性があるならば、「3年ルール」を覚えておきたい。
「相続した実家に住む予定がなければ、早めに処分して現金にした方が、固定資産税など余計なお金がかかりません。相続してから3年10か月以内に売却すれば『取得費加算の特例』が適用され譲渡所得税が節税できます」(鈴木さん)