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ビジネス
職業としてのヤクザ

【溝口敦×鈴木智彦「職業としてのヤクザ」対談】暴力団取材のプロが語り合う「シノギ」とは何か

ジャーナリストの溝口敦氏(左)とフリーライターの鈴木智彦氏

ジャーナリストの溝口敦氏(左)とフリーライターの鈴木智彦氏

 2015年8月の山口組分裂抗争の勃発からちょうど10年。今年4月には抗争の「終結宣言」が出されたが、そうして暴力団が絡んだ抗争事件や経済事件などがよく報じられる一方、そもそも彼らがどのように稼いで生活しているのかという情報は少ない。長年暴力団取材を行ってきたノンフィクション作家の溝口敦氏、フリーライターの鈴木智彦氏が「職業としてのヤクザ」について語り合うなかで、「博徒系」「テキ屋系」などを自認する暴力団に話題は及んだ。(溝口敦/鈴木智彦・著『職業としてのヤクザ』より一部抜粋・再構成。肩書き等は2021年4月の出版当時のもの)

暴力そのものをシノギとする

溝口:先ほど博徒とテキ屋では使う言葉が違うと言いましたが、博徒の勢力範囲を縄張りというのに対し、テキ屋のそれは庭場と言います。縄張りはもともとその地域で賭場を開帳する権利といったもので、貸元と言われる親分が縄張りを持ち、代貸しが貸元のもとで管理・運営にあたる。今ではそれが拡大解釈されて「この地域の店はうちの縄張り」といった考え方になりました。誰かが認めたわけでなく、勝手に無理やり利権化するのです。そして用心棒代などの「みかじめ料」を取って、万が一客が店で乱暴などすれば、組が責任を持ってその客をつまみ出す。

 テキ屋の場合、庭場に権限を持つ者を庭主といい、庭主が出店の位置を采配し、神社や警察との掛け合いに責任を持ちます。会場内で喧嘩が起きたりすれば庭主の若い者がうまく収め、そうしたことの見返りに出店する者はショバ代を払います。

 警察の分類では、博徒系とテキ屋系のほかにもう一つ、愚連隊系があります。愚連隊系というのは、終戦直後に戦争帰りの軍人とか大学生崩れとか、そういうのが始めた組織が源流となっている。鈴木さんが取材してきた安藤組(法政大学を中退した安藤昇を組長とした組織。六四年に解散)とかね。

鈴木:その三分類は、恐らくシノギの形態で分類されています。ざっくりいえば、博徒でもテキヤでもない暴力常習者が愚連隊です。シノギはいわゆる用心棒だとか、世間で言われる暴力団的なゆすり・たかりの先駆けですね。みかじめ料とか、覚醒剤を売買するとか。かつては警察の分類も細分化しており、会社ゴロ、港湾ゴロ、不良土建、右翼系暴力団、不良興行、新聞ゴロ、炭坑ヤクザなどがいました。

 博徒の場合は、自分たちの利権を守るための暴力です。脛に傷持つ違法業種だから、警察に駆け込めない。トラブルがあっても自分たちでカタを付けるしかなく、暴力を使って自衛もする。テキ屋も普段はおとなしいけど、庭場を荒らされたりしたら、最後は暴力で解決します。最近は警察が道路使用許可を出すので、指定暴力団の代紋が邪魔となり。あくまで露天商である、表の仕事だと強調するようになりました。

 それに対して、愚連隊の場合は、暴力そのものを金に換える。自分たちの生存基盤を持たずに、他人の金を奪ったり、暴力というサービスそのものを買ってもらうわけです。つまり、暴力そのものがシノギになっています。

次のページ:広域暴力団はシノギの百貨店
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