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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

「自分だったらどうするか?」大前研一氏がスタンフォード大学客員教授時代に着想、ビジネス思考トレーニング「RTOCS」が今の時代に求められるワケ

ビジネス・ブレークスルー大学大学院の学長も務める、経営コンサルタントの大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー大学大学院の学長も務める、経営コンサルタントの大前研一氏

 経営コンサルタントの大前研一氏が学長を務めるBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学大学院で20年間にわたって続けられている人気の演習がある。それがRTOCS(アールトックス)=Real Time Online Case Studyだ。政治・経済・経営などの様々な課題について「もし私が○○だったら?」と仮定し、組織のリーダーとしての立場から現状を踏まえて将来像を予測し、今後の具体的な打ち手を考える思考法だ。

 大前氏が、この独自のトレーニングを発想したのは、米西海岸のIT企業の聖地・シリコンバレーだったというが、どのような経緯で生まれたのか? 新刊『RTOCS 他人の立場に立つ発想術』が話題の大前氏が解説する。

 * * *
 私がRTOCSを教育の場で実践したいと考えたきっかけは、1990年代後半にスタンフォード大学の客員教授をしていた時の経験だった。

 1995年に米マイクロソフト社からパソコンの新OS「ウィンドウズ95」が発売され、1998年にグーグルが創業するなど、IT革命が一気に加速した。当時、マイクロソフトのビル・ゲイツCEOが著わした『思考スピードの経営』という著書が象徴するように、シリコンバレーにおける進化はあまりに速く、企業経営はその変化のスピードにいかに対応するかが重視されるようになっていた。

 にもかかわらず、大学の経営学で教えられているケーススタディは、そのスピードについていけていなかった。当時は、半年以上かけて調査・リサーチした上でケーススタディを作成し、それを5年ぐらい繰り返し使っているような状態だった(それを日本の大学が“輸入”して使い回していることも多かった)。

 ある時、スタンフォード大学の別の教授が、日本企業の事例を取り上げるので、私にも見学に来てほしいと言ってきた。そこで、その授業を見に行くと、「日産自動車はいかにしてフォードを凌駕したか」というテーマだった。しかし、実はその時点で、すでに日産は経営不振に陥っており、対するフォードは経営危機のマツダを傘下に収めるなど規模拡大を進めていた。

 そのため、学生側から「このテーマはあまりに古すぎないか」という疑問を呈されていた。だが、教授のほうは、このケーススタディしか用意していないため、与えられたデータをベースに考えてほしいと言うだけだった。ほかにも、学生から「その企業はすでに倒産しています」「M&Aで他社の傘下に入っている」などと指摘されることも少なくなく、先生よりも生徒のほうが、よほど企業経営の実態をよく知っているではないかと感じたものだった。

 今後そのスピードはさらに加速していくに違いない。「思考スピードの経営」が求められる時代には、リアルタイムかつアベイラブル(入手可能)な情報を駆使した事例をもとに、どのような経営をしていくかを考える練習をしていかなくてはならない──そう思い至ったのだった。

次のページ:経営者として一番重要なのは「自分だったらどうするか」

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