中国の不動産に対する政策運営方針はどうなっているのか(習近平・主席。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《《中国不動産不況の現在地》長く業界を牽引してきた万科企業がデフォルトの危機 破産した恒大集団に続き、碧桂園・融創中国・広州富力地産ほか“民営系”は総じて苦境に》を踏まえて、中国経済全体における不動産不況の位置づけと、中国が目指す経済運営システムについて解説する。
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中国の固定資産投資に占める不動産投資の比率を見ると、過去最大を記録した2020年には29.5%に達していたが、2024年には19.3%まで低下している。名目GDPに占める不動産の割合は2020年には8.3%であったが、2024年は6.3%に留まっている。
不動産のGDP比率についてだが、波及効果を考慮した値は当然、6.3%よりは大きい。参考値として約10%とする本土セルサイドのレポートなどが散見される。2020~2022年のデータで産業連関表を用いて推計したレポートなどもあるが、それらの中には約30%といった数字もみられる。日本のマスコミは盛んにこの約30%といったデータを引用し続けているが、今となっては過大評価と言わざるを得ない。
前述のように足元では急激に不動産のGDP比率が下がっている。連動性が高いとみられる建築業のGDP比率は過去5年間7.0%から6.7%への下落に留まっている。産業構造の変化は急速に進んでおり、過去の長期データを必要とする産業連関表の分析には限界があることなどを考えあわせると、前述の10%の方が実体に近いのではなかろうか。そうはいっても、まだ十分大きな数字である。不動産不況が景気悪化の元凶であるということに疑いの余地はない。
