細木数子さんの著書は「占い本世界一」としてギネスブックに連続して掲載された
Netflixで配信されている戸田恵梨香主演のドラマ『地獄に堕ちるわよ』が大きな注目を集めている。同作がモデルとしたのは、六星占術で一斉を風靡した占い師・細木数子さんだが、ビジネスの面から見て、細木さんのすごさはどこにあるのか。細木さんが築き上げたビジネスモデルと、生成AI時代でも通用する占いマーケットの現状について、イトモス研究所・小倉健一氏が解説する。
細木数子さんが作り上げた「計算され尽くしたビジネスの仕組み」
私たちは日々、数え切れないほどの選択を迫られながら生きている。右に行くべきか、左に行くべきか。立ち止まるべきか、進むべきか。人生の岐路に立った時、正しい答えを教えてくれる教科書はどこにも存在しない。というか、正しい答えなどが存在しているかも怪しい。暗闇の中で迷子になったような感覚に陥り、誰かに道案内をしてほしいと願うのは、人として極めて自然な感情であろう。
占いというサービスは、見えない不安に対する案内役として、長きにわたり人々の生活に溶け込んできた。
占いがお金になることを最もわかりやすく証明したのが、Netflixでドラマもつくられた細木数子さんが残した記録である。彼女の“成功”が意味することは、単に占いが当たるか当たらないか、というレベルの話ではない。計算され尽くしたビジネスの仕組みを作り上げた結果である。その強みは、なんといっても本が売れたことだ。
細木さんが書いた本の累計発行部数は9500万部を超えた。「占い本世界一」としてギネスブックに連続して掲載されたほどだ。
日本の人口を考えれば、ほとんどの人が一度は細木さんの本を目にした計算になる。本が売れれば印税が入る。出版業界の一般的な印税率を思い浮かべるだけでも、9500万部から得られる収入は想像を絶する金額になるだろう。恋愛や人間関係について書かれた個別の本も、それぞれ数十万部という単位で売れ続けていた。占いというサービスが、目の前でお客さんを占うだけでなく、本という形で全国に広がることで、とてつもない富を生み出す可能性を持っていることが証明されたわけである。
細木さんがこれほど多くの人から支持された理由は、テレビでの露出に加えて、占いを学問のように見せた点にあると思う。古い時代の学問を深く研究し、六星占術という独自の体系をつくり上げたわけだ。だからと言って、彼女の占いがぜんぶ当たる、というわけではなく、過去の報道や検証によれば半分も当たっていなかったとの指摘もある。
細木さんは運勢を占うだけではなく、人生の壁にぶつかっている人々へ心の持ち方を教えるカウンセリングのような役割を果たした。結果として、占いに興味を持つ人々だけでなく、会社を経営する社長や働く人々までもが彼女の言葉に耳を傾けるようになった。
テレビと本の使い分けも見事であった。細木さんはテレビ番組によく出演していたが、テレビはあくまで多くの人に顔を知ってもらう場所として割り切っていた。そして、詳しい解決策や解説は、自分が書いた本を読むように促していたのだ。テレビを見た人は、より深い情報を求めて本屋へ向かう。親子関係の悩みや人間関係の絆といった、いつの時代も変わらない普遍的な悩みに対して、明確な答えを出し続けることで、長く売れ続ける本を何冊も生み出した。
