これぞ絶品! 噛めば噛むほど旨味が染み出るシロコロホルモン
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第29回は、何度食べてもまた食べたくなるご当地グルメに再会するために小田急線に飛び乗った。【連載第29回】
シロコロとは「豚の大腸」である
飲みたいときがうまいとき。それを合言葉に昼日中っから酒場をめぐる「昼酒御免!」。29回目は本厚木へ出張し、シロコロホルモンの名店、「酔笑苑」をお訪ねしました。
ときは8月下旬の土曜日。平日は午後4時開店だが、土曜は3時開店ということなので、飲み友ケンちゃんと私は、気が急いたものか2時半には本厚木に到着。開店20分前には早くもできている列の最後尾についた。
「いやあ、楽しみですね。ところで、シロコロというのはシマチョウのことですか?」
関西出身のケンちゃん、根本的なところを勘違いしている。
「シマチョウ? ああ牛の大腸ね。あのね、シロコロは、大腸だけどね、豚なんだね」
「ああ、え? 豚? ああ、そうか! 大阪のホルモンとは違うんですね」
そうなのだよ、ケンちゃん。本厚木のシロコロホルモンといえば豚の大腸を裂かずに筒状にカットしたものなのだ。こいつを網の上で焼くと、ぷっくり膨れて見るからにうまそうになり、口に含めば濃厚な脂がなんともいえず……、と言いかけたところで、私はグッとこらえた。百聞は一食に如かず、と思ったからだ。あと30分もすれば、ケンちゃんもあの至福の一瞬を楽しむことになる。食べる前からあれこれ吹き込むのはヤボというもの。ここは黙っておくことにしたのだ。
開店前から行列ができていた
それにしても暑い。立っているだけで、額に汗が流れ、シャツにも沁みてくる。この暑さだ。エアコンの効いた室内に入っても、ホルモンを焼く網の下で赤く燃える炭火から吹き上がる熱気で、顔中が火照ることになるだろう。そう、その暑さと熱が、真夏にシロコロを食べにくる醍醐味でもあるのだ。私は目を閉じ、ホルモンが焼けていく様を思い浮かべ、早くもうっとりするのだが、その横でケンちゃんは30年近く前の、若き日のことを思い出し、しばし、語ってきかせてくれるのだった。
ケンちゃんは青山学院大学の出身だ。入学して部屋を借りたのは代々木上原。しかし1~2年の講義は当時厚木にあったキャンパスまで受けに来ていたという。
「駅前のパチンコ屋は昔からありました。1限に間に合うように本厚木まで来たのに、パチンコ屋は9時から開くからつい並んでしまって。ある日、機械が壊れていたのか、1日中玉が出続けたことがあるんです。それで閉店まで打って、かなり儲かったけど、とても疲れもしたので、近くに下宿している友達のところに泊めてもらったことがあります。あのときは、よく出たなあ」
「君は何をやっていたのかね」
「普通は3年生から渋谷に通うのですが、僕は3年目も厚木に通っていましたね、はははは」
パチンコが原因でダブるとは、覇者だねケンちゃんは。それでも、5年かかって卒業した暁には、天下の小学館に入社するのだから大したものだ。面接官をビビらせる底知れぬものを持っていたのかもしれない。

