サラダコスモの中田智洋・社長
一袋数十円で売られる「モヤシ」を主力に、46期連続で黒字経営を続ける地方企業がある。岐阜県中津川市に本社を置く「サラダコスモ」だ。経営の特徴は新商品開発力と積極的な設備投資にある。本社に併設する形で開業した「ちこり村」からは2021年に1本2000円の高級食パン「栗きんとん生食パン」を発売し、年間20万本売れるヒット商品に育てた。同社の強みはどこにあるのか。ジャーナリストの井上久男氏がレポートする。【全3回の第2回】
全従業員が売上・収益情報、販売計画を共有
8月6日夕、中津川市の居酒屋にサラダコスモの従業員40人ほどが集結した。その多くが「ちこり村」で働くパートタイムの従業員たちだ。「ちこり村」は秋の観光シーズンの9~11月にかけて年間売り上げの45%を稼ぐ超繁忙期となる。それを見据えて、目標達成に向けてのキックオフ大会が開催されたのだ。
パートタイマーには中高年の主婦が多いが、口々に「今年の『栗きんとん生食パン』の販売目標は25万本」といった具合に数値目標が出てくる。これには理由がある。同社社長の中田智洋氏(76)は正社員、パートタイマーに分け隔てなく、来店者数や売上・収益情報、販売計画などを「LINE」などを介して共有しているからだ。今年は中田氏が「ちこり村」の売上高を1.5倍にする目標を掲げているので、それが末端の全従業員にまで伝わっているのだ。
「ちこり村」でパン屋の店長を務める川村和伸氏(51)は言う。「昨年は『栗きんとん生食パン』の生産が需要に追い付かなかったため、億円単位で投資をしてパンを焼く機械を増設して自動製造ラインも導入した。これにより焼き上がりに4時間かかっていたのが、50分短縮できた。新たに30人をパートタイムで採用することで2シフト制から3シフト制に変え、生産能力を1.5倍に引き上げます」
あわや黒字倒産の危機も
【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/ジャーナリスト。1964年生まれ、福岡県出身。九州大学文学部卒業後、大手電機メーカーを経て朝日新聞社に入社。経済部で主に自動車や電機を担当し、2004年に独立。主な著書に『自動車会社が消える日』(文春新書)、『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)などがある。
※週刊ポスト2026年9月18日号
