大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

世界的データ解析企業「パランティア」の台頭 AIの論理的な判断が世界をどう変えるか

これから求められるスキル

 実は、パランティアの共同創業者アレックス・カープCEO(最高経営責任者)は、岸田文雄首相と昨年12月9日に首相官邸で16分間会っている。これは政府が2023年度から5年間の防衛費を現行の中期防衛力整備計画の1.5倍超にあたる総額43兆円程度に増やすことを閣議決定した1週間前のことである。実に意味深なタイミングだ。

 いずれにしても、今や軍事からビジネス、日常生活まで、AIやビッグデータ解析、IoT(モノのインターネット)を抜きには成り立たない時代になっている。そして、AIの能力が人間の能力を超えるシンギュラリティ、すなわち情報革命による「第4の波」=サイバー社会後半のピークを迎えたら、日本もIT産業だけでなく様々な業種・業界で大規模なリストラが行なわれ、“大失業時代”に突入するだろう。

 だが、チャットGPTにしろ、パランティアのシステムにしろ、正しい情報を入力しなければ、正しい情報は出力されない。そこで重要になるのは「0から1」を生み出す「構想力」「質問する力」であり、その大前提となるのは「答えがない問題」に対して様々な仮説を立てて結果を検証する作業を繰り返し、論理的に最適解を見つけ出す「問題解決力」だ。

 たとえば、前号(『週刊ポスト』2023年3月10・17日号)で指摘したように、いま単にプログラミングをやっているだけのIT技術者たちは、これからチャットGPTに置き換えられてしまうだろう。

 だが、どんな製品を生み出すかを構想できる人間はそうはならない。あるいは、いつも決まったメニューを作っているだけの料理人はロボットに取って代わられるかもしれないが、旬の食材を使って独創的な旨い一皿を生み出せる料理人は、シンギュラリティが到来しても全く影響を受けない。

「構想力」「質問する力」「問題解決力」は、これから最も求められるスキルであり、「第4の波」の激流の中で生き残っていくために不可欠なのである。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『第4の波』(小学館)など著書多数。

※週刊ポスト2023年3月24日号

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