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駒大陸上部・大八木弘明総監督が明かす指導法の変化 選手への檄は「男だろ!」から「もっとできる」へ

監督・コーチ時代を含め「大学3大駅伝」で通算27回優勝に導いた駒澤大学陸上競技部の大八木弘明・総監督(写真/水上俊介)

監督・コーチ時代を含め「大学3大駅伝」で通算27回優勝に導いた駒澤大学陸上競技部の大八木弘明・総監督(写真/水上俊介)

 新年度が始まり、新しい環境に飛び込み、コミュニケーションに不安を抱く人もいるだろう。頑なに自分の意見を押し通してしまう、人の意見に耳を貸さない、目下の人の意見は「何も知らないくせに」と一刀両断してしまう……そんな人もいるかもしれない。28年間、若者とともに厳しい勝負の世界を生きてきた大学駅伝界の名伯楽は、世代間のギャップをどう埋めてきたのだろうか。駒澤大学陸上競技部の大八木弘明・総監督(64)に、話を聞いた。

「世間の皆さんには、いつも怒ってばかりいるスパルタ監督と思われているようですが、それは過去の話。もう頭ごなしに『ああしろ、こうしろ』という時代ではありません。それに気づいて5年ほど前から指導法を変えました。頑なな態度を貫いても、人の心は動かせないことを実感したからです」(大八木さん・以下同)

 2022年の出雲駅伝と全日本大学駅伝、それに今年1月の箱根駅伝を加えた三冠を達成した駒澤大学陸上競技部。同部を28年間指導した大八木さんは、東京五輪マラソン代表の中村匠吾選手や、今年の東京マラソンで日本人1、2位を占めた山下一貴選手、其田健也選手などを育て上げた。

「以前の私は、確かに厳しかったと思います。とにかく優勝して実績を上げないといい人材も入ってきませんから、練習量もいまとは比べものにならないほどでした。その結果、2002年から箱根駅伝を4連覇し、『常勝軍団』と呼ばれるまでになりました。

 当時は親に厳しく育てられた我慢強い子が多くて、『これをやったら強くなれるぞ!』と言えば、『はい、わかりました!』と一生懸命やる。一方通行の指導でうまくいっていたんです。

 ところが、55才を過ぎたあたりから、『いまの子はゲームばかりやって、人の話をあまり聞かないな』『親も優しくなり、叱られるのに慣れてない子が増えてきたな』と感じるようになりました。

 私は昭和の人間で、瞬間湯沸かし器みたいに短気だし、声も大きくてめったに人を褒めないから、彼らは常に叱られている感じがしたのでしょう。萎縮し、私と目も合わせない子もいました」

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