ビジネス

テスラ株暴落でもイーロン・マスク氏が強気な理由 「サイバートラック」納車開始が成長起爆剤、市場環境も追い風に

テスラの成長を横目にライバルたちの伸び悩み

 ただし、販売実績を見ると、テスラの数字は決して悪くはない。1−3月にテスラが売り上げたのは高価格帯の「モデルS」と「モデルX」が10,695台。「モデルY」と「モデル3」は合わせて412,180台だった。

 一方、生産台数は「モデルS」と「モデルX」が19,437台、「モデルY」と「モデル3」が421,371台だった。つまり、少なくとも「モデルY」と「モデル3」に関しては、作った車をほぼ売り切ったことになる。値引きがあったとはいえ、四半期の販売実績としては上々の数字と言えるだろう。

 一方、テスラのライバル達は伸び悩んでいる。フォードが1−3月期に売り上げたEVは10,866台。GMは「シボレー・ボルトEV」が好調で19,700台を売ったものの、「キャデラック・リリック」は968台、「ハマーEV」は2台にとどまっている。

 両社ともに昨年比では大きく数字を伸ばしたものの、テスラと比較するとその差は依然として大きい。

 フォードは「マスタング・マッハE」を今年中に20万台、「F−150ライトニング・ピックアップトラック」を15万台販売、GMは「シボレー・ボルトEV」を7万台販売、という目標を掲げている。だが、「シボレー・ボルトEV」こそ目標を達成できそうだが、その他の車種では、フォードはかなりの苦戦を強いられるだろう。

 実際、テスラより先に値下げ戦略を打ち出したのは「シボレー・ボルトEV」で、2022年に一気に6000ドル以上値下げしている。「シボレー・ボルトEV」の最も安いモデルは26,000ドル台からと、コンパクトEVとしては世界最安値圏となっている。元々「テスラキラー」としてデビューした「シボレー・ボルトEV」だが、値下げしてもライバルである「モデル3」に追いつくことさえできていない。

「EV補助金」で米国メーカーが有利に

 一方、米国市場においては、米国自動車メーカーに追い風が吹いている。バイデン政権による「インフレ抑制法」でEVへの補助金が打ち出されたのは2022年8月だが、その条件として「米国内で最終組み立て」「バッテリー、部品などが一定割合で米国および米国と自由貿易協定を持つ国で生産」などとされている。

 欧州メーカーや日韓メーカーはこの条件に反発、是正を呼びかけていたが、米政府は逆に規制を強めることになった。

 その結果、2023年4月18日に、7500ドルのフル補助金を受けられるモデルは、米国産のわずか10車種に限定されることが発表された。対象はGM「シボレー・ボルトEV」、フォード「F−150ライトニング・ピックアップトラック」、テスラ「モデルY」「モデル3」など、米国メーカーのみだ。長く米国でEVを販売してきた日産リーフさえ除外されることが決まった。

 さらにバイデン政権は自動車の排気ガス規制を強め、「2032年には販売されるすべての車の6~7割をEVにする」ことを目標に掲げた。EV補助金が2032年まで続くことを考えると、米国メーカーのEVは、米国市場で相当有利になるのは間違いない。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。