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「映画料金2000円時代」で問われる映画館の価値 サブスク全盛の中で割高感をどう払拭するか

映画料金は20年以上「1800円」据え置きだった

 映画の一般料金は1993年以降、20年以上値上げされない時期が続いていた。

「1980年代の映画の一般料金は1500円でしたが、1990年代初頭から1993年にかけて、段階的に1800円まで上がりました。同時に、各映画館がさまざまな割引サービスを導入するようになり、1800円より安い価格で映画を楽しむ観客も多いのは事実です。

 今回のTOHOシネマズの場合、割引サービス適用時の料金も100円ずつ値上げするとはいえ、今後はそれらの割引サービスを利用する人が増える可能性は高いと思います」

 20年以上も1800円で据え置きだったことを考えると、いま2000円に値上げされたとしても、それなりに“良心的な価格設定”のようにも感じられるが──。

「映画料金が据え置きだった間に、レンタルビデオ、CSやケーブルテレビ、そしてネットでの配信など、映画を楽しむ方法が多数登場しています。劇場公開から配信開始までのスパンも短くなる傾向がありますし、単純に作品を観るだけであれば、映画館で観るよりも安く済ませる方法がある。そうしたなかで、映画料金が相対的に高く感じられていくのは、仕方ないことかもしれません」

全席プレミアムシートの劇場も登場

 他方、今年4月には新宿・歌舞伎町の複合施設「東急歌舞伎町タワー」内に“全席プレミアムシート”のシネコン「109シネマズプレミアム新宿」がオープンした。8スクリーンの全752席がプレミアムシート(4500円のCLASS Aと6500円のCLASS Sの2種類)で、サイドテーブルやリクライニング機能を備えているほか、ドリンクやポップコーンも無料だ。

全席が「プレミアムシート」でリクライニングできる、東急歌舞伎町タワー内の映画館「109シネマズプレミアム新宿」(時事通信フォト)

全席が「プレミアムシート」でリクライニングできる、東急歌舞伎町タワー内の映画館「109シネマズプレミアム新宿」(時事通信フォト)

「月額で見放題のサブスクリプションサービスが普及したことで、映画館で映画を観る料金がどうしても“割高”に感じてしまうのは避けられない。となると、“映画館でしか体験できないこと”をどう提供するか、という方向性がかなり重要になってきます。

 もちろんその分料金も高くなりますが、109シネマズプレミアム新宿のようなラグジュアリーな空間で楽しむ方向性のほか、3D、IMAX、4DXなど、大スクリーンと大音響ならではの上映システムへの需要はますます高まるでしょう」

 料金2000円時代に突入する映画館。“観る”だけでは終わらないエンターテインメントを提供することが、観客の満足度を高めるカギとなりそうだ。(了)

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