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【2070年には「総人口の1割が外国人に」】政府が思い描く“多民族国家ニッポン”の虚妄

はるかに大きい「日本人人口の減り幅」

 それ以前の問題として気づいておくべきことがある。外国人労働者の受け入れを拡大したところで、日本の人口減少が解決するわけではない。日本人人口の減り幅のほうがはるかに大きいためだ。

 社人研の将来推計によれば、日本人人口は2020年の1億2339万9000人から、2070年には4579万3000人少ない7760万6000人となる。年平均91万5860人の減少だ。社人研が脆弱な根拠を基に想定する外国人人口の増加ペース「16万4000人」と比べてもはるかに大きな数字だ。

 毎年数十万人規模の人材を日本に送り出す余裕のある国がどこにあるというのか。送り出し国は日本だけと関係を結んでいるわけではない。

 むろん、外国人の受け入れを拡大すれば、外国人が関係する日本での出生数も増える。それでも日本人の減り幅を穴埋めするほどの規模になることは想定しがたい。

 外国人の受け入れは、労働者不足も解決しない。同じく社人研の推計によれば、2020年の日本人の20~64歳人口は6713万人だが、2070年には3585万2000人と、3127万8000人少なくなる。単純計算すれば年平均62万5560人の減少だ。

 在留資格の要件を緩和すれば外国人労働者が増えて人手不足はある程度改善するかもしれないが、人手不足状況は延々と続くこととなる。

「外国人労働者が切り札」という幻想

 来日する外国人労働者が増えることと、定住者や永住者が増えることはイコールではなく、足元の人手不足を解消するための外国人の受け入れ拡大と、人口減少対策としての外国人人口の増加策も混同してはならない。

 外国人人口の増え幅よりも日本人人口の減り幅のほうが大きいということは、人口減少による国内マーケットの縮小も、働き手の不足によってさまざまなサービスが滞る事態も避けられないということだ。「外国人の受け入れ拡大で人口減少に歯止めをかける」などという一部の政治家や経済界幹部などの意気込みを鵜呑みにしていたら、日本は沈む。

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