私に何ができるのかと考えて、得意な料理を生かせる居酒屋を開こうと考えました。好きは何にも勝る原動力になるんです。まずは居酒屋でアルバイトを始めて修業し、5か月後には自分の店を持てるようになりました。
この店は、おかげさまで人気店に成長しましたが、店が忙しくなると、帰宅が深夜になります。それでも、朝6時には起きて夫の食事を作り、リハビリや通院にも付き添って……。でも全然“苦”じゃなかったんです。
というのも、私の夢はもともと夫を支えるお嫁さんになること。結婚後は、家族のことを考え、夫や子供に尽くしてきました。“尽くす”というと、自己犠牲の上に成り立っているように感じる人もいるかもしれませんが、そうではないと思うんですよね。相手にどう伝えたらうまくいくだろう、相手は何を求めているだろうって、相手のことを考える“思いやり”の心だと思うんです。
専業主婦って実は、誰よりもこの“思いやり精神”が強いと思います。これこそ、長らく専業主婦をやってきた私ならではの強みだと思っています。
50才からの挑戦、新天地に飛び込んで
さらなる挑戦をつきつけられたのは、50才のときです。
「『ドムドムハンバーガー』で、メニュー開発のアイディアを提供してもらえないか?」と、居酒屋のお客さまから声をかけていただいたんです。「ドムドムハンバーガー」と言えば、日本で最初のハンバーガーチェーン店。50才にして、そんな歴史ある企業に誘っていただいた喜びや感謝もありましたが、一方で違うことも考えていました。
当時は、2年前に夫が亡くなり、少し気持ちも落ち着いてきた頃。息子も成人し、夫の志を継いで政治の道を歩き始めていました。それまでの私にとって、“働く”のは“家族のため”でしたが、これからは、働くことで“自分の可能性”を知れるんじゃないかと思ったんです。そう、自分のために働いてみようと決意したわけです。